婚姻届を提出していないパートナーに遺産をあげるにはどうすればいい?
婚姻届を提出しないカップルが増えている近年。
相手が亡くなるとその財産はどのようになるのかご存知でしょうか?
今回は「婚姻をしていないパートナーに遺産をあげる方法」について詳しく説明します。「パートナーに財産を遺したいがどうすればいいかわからない」という方等は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。
目次
婚姻届を提出しているパートナーとそうでない違い
はじめに婚姻届を提出していないパートナーと提出したパートナーの法的な違いについて説明していきます。
婚姻届を提出したパートナーの法律的な効果
婚姻届を提出した場合のパートナーにおける法律的な効果としては
- 互いの血族との間に親族関係が発生すること
- 夫婦は同一の氏を称すること
- 婚姻中に生まれた子は夫の子と推定されること
- 夫婦はお互いに相続権をもつこと
婚姻届を提出していないパートナーの法律的な効果
婚姻関係にある夫婦に与えられている法律的効果のうち、大部分はパートナー関係にも認められています。婚姻届出が前提となるものや、戸籍の記載と密接に関わること(相続など)以外は、婚姻届を提出したパートナーと同様の効果があります。
精神的にも日常生活においてもお互いに協力し合った協同生活形態があれば良いとの判決も出ています。
生前贈与と遺言で財産を遺す方法
婚姻届を提出していないパートナーに遺産をあげる方法として生前贈与と遺言があげられます。以下では生前贈与と遺言で財産を遺す方法について説明していきます。
生前贈与
パートナーに財産を渡すためには、生前に贈与する方法があります。
生前贈与は、贈与する人と受け取る人の関係に制限がないため、うまく活用することで、生前にパートナーに財産を渡すことができます。しかし、年間の贈与額が110万円を超える場合には、財産を受けとる人は贈与税の申告が必要となるため、贈与額には注意が必要です。
パートナーが亡くなった時に残った財産は、相手のパートナーには受け取る権利がありません。
その為、亡くなった後の残りの財産をパートナーへ相続させたい時は、遺言書を作成したり、生命保険の受取人をパートナーにするなどの対策があります。
生前贈与が行われると「遺留分」を侵害する可能性があります。
遺留分とは、法律的に決められている相続人(法定相続人)のための、最低限の相続取得分のことです。法定相続人には財産を取得する権利があるため、あまりに多額の生前贈与が行われると、贈与を受けられなかった相続人の取得分が大きく減ってしまい、権利を害されてしまいます。
具体的には以下のような生前贈与があると、遺留分侵害額請求の対象になります。
- 相続開始前1年間に行われた生前贈与
- 遺留分権利者を害すると知って行われた相続開始1年以上前の生前贈与
- 法定相続人に対して行われた相続開始前10年以内の生前贈与
遺言
遺言書は、亡くなった人の生前の意思が反映されているため、強い効力を持ち、法定相続よりも優先されます。
パートナー関係においては、お互い相続権がないため、相手に財産を譲る旨の記載すれば、法律上の婚姻関係が無くても財産を渡すことが出来ます。
この場合、パートナーは相続時に財産を受け取っているため、相続財産の総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、相続人でなくても相続税の申告を行う必要があります。
婚姻関係にある夫婦の配偶者に与えられている、相続税の控除(「相続財産の1/2まで」又は「1億6,000万円までの相続財産」を取得した場合には相続税が課税されない)は受けることができません。
遺言も生前贈与と同様に、本来の相続人から遺留分についての請求があれば、財産を渡さなければならない可能性があります。
特別縁故者として遺産を受け取る方法
特別縁故者とは、亡くなった人と特別親しい関係にあったことを理由に、法定相続人がいない場合、遺産の全額または一部を取得できる人のことです。
相続では原則として、亡くなった人に法定相続人がいなければ最終的には国のものになってしまいます。理由としては、財産を受け取る人がいないためです。
ただ、法定相続人ではなくても亡くなった人と特別親しい人がいるのであれば、その人に遺産を与えてもいいのではということで、法律的に特別縁故者への財産分与を認めています。
パートナーは法定相続人ではないため、遺言がない限り遺産を受け取れないのが原則ですが、「特別縁故者」として認められると遺産の全部や一部を受け取れる可能性があります。
特別縁故者として認められる人は以下の通りです。
- 生計を同じくしていた人
- 療養看護につとめた人
生前、献身的に介護を行い、自宅だけではなく老人ホームや介護施設に通って看護した人も特別縁故者となる可能性があります。
亡くなったパートナーと、特別密接な関係にあったと認められれば特別縁故者になる可能性があります。
しかし、特別縁故者は、あくまで「相続人がいない場合」に限られます。
たとえ行方不明や音信不通、亡くなった人と不仲だったなどの事情があっても、相続人であることに変わりはなく、法定相続人が現れたらパートナー関係では遺産を受け取れないでしょう。
相続人が誰もいなくても、パートナーが自動的に特別縁故者になれるわけではありません。家庭裁判所に申立をして、特別縁故者と認められる必要があります。
また、特別縁故者への財産分与の申立は「相続人不存在の確定後3カ月以内」に行わなければならなず、期限を過ぎると遺産を受け取れなくなるので注意が必要です。
申し立てを1人で対応するのはハードルが高いので、相続関係に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
まとめ
婚姻届を提出していないパートナーに遺産を渡す方法には、生前贈与と遺言が有効です。
生前贈与では、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかります。遺言では法定相続よりも優先され、パートナーに遺産を譲ることが可能です。
また、特別縁故者として認められれば、法定相続人がいない場合に遺産を受け取ることもできますが、家庭裁判所の認定が必要です。生前に対策をご検討中の方は当法務事務所に相談ください。
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著者情報
代表 柳本 良太
- <所属>
- 司法書士法人 やなぎ総合法務事務所 代表社員
- 行政書士法人 やなぎKAJIグループ 代表社員
- やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役
- 桜ことのは日本語学院 代表理事
- LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師
- <資格>
- 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
- 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
- 2009年 司法書士試験合格
- 2010年 行政書士試験合格