目次

お悩み内容

今回のご相談は、「お父さんの遺産分けが進まないこと」です。相談者さんは、長い間遺産分けが進まず、このままだと自分の子どもに迷惑をかけてしまうのではないかと心配しています。

家族構成

  • お父さん(亡くなった人)
  • 甥っ子(お兄さんの息子)
  • 相談者さん
  • お姉さん

お父さんが亡くなり、相続人(財産を受け取る権利のある人)には、相談者さん、甥っ子、お姉さんがいます。しかし、お姉さんとの連絡が取れなくなり、遺産分けの話し合いが進まない状態です。

まずは遺産分割調停・審判を検討


方法の一つは面談者のお姉さまと電話やお手紙を送付し、遺産分割協議をするように促すことが考えられます。
遺産分けの話し合いができない場合、家庭裁判所に行って「遺産分割調停」や「審判」という手続きを使うことができます。これは、裁判所で第三者の立ち会いのもと、相続人同士が話し合いをする仕組みです。

調停は、みんなで話し合って合意を目指す方法です。もし話がまとまらない場合は、審判という裁判のような形で、裁判官が最終的に決めてくれます。

相続放棄はできないの?

相談者さんは、「相続放棄」をすれば問題が解決するのではないかと考えました。
しかし、相続放棄は「相続が始まったことを知ってから3か月以内」にしなければなりません。今回はすでに長い時間が経っているため、相続放棄をすることはできません。

ただし、相談者さんが亡くなった後、相談者さんの子どもが相続放棄をすることは可能です。この場合、子どもは相談者さんの財産や借金を引き継がずに済みます。

相続分譲渡という選択肢

相続譲渡
もう一つの方法は、「相続分譲渡」です。
これは、自分がもらえるはずの相続分(財産の権利)を他の人に譲る(あげる)ことです。譲渡する相手は、相続人でも第三者でもかまいません。相続分を譲ることで、自分は相続の権利を失いますが、借金の支払い義務は残ります。

相続分譲渡の手続き

  • 相続分を譲るときは、書面で証明書を作って実印を押す必要があります。
  • 他の相続人には、譲渡したことを通知しなければなりません。

相続放棄と相続分の譲渡の違い

相続放棄は、相続が最初からなかったことにする手続きです。相続放棄をすると、財産も借金も一切引き継ぎません。しかし、相続放棄ができるのは相続開始から3か月以内だけです。

一方で、相続分譲渡は、自分の相続分を他の人にあげることです。譲渡した場合、自分は相続分を失いますが、借金の支払い義務は残ります。相続分譲渡は、相続放棄と違い、相続人の立場を完全に失うわけではありません。

仮に私が生きている間に相続手続きが終わらなかったら?

もし相談者さんが生きている間に相続手続きが終わらなかった場合、相談者さんが亡くなった後に子どもが相続人になります。子どもは相談者さんの財産を引き継ぐか、相続放棄を選ぶことができます。相続放棄をすれば、財産も借金も引き継がずに済みます。

ただし、相談者さんが生きている間に子どもへ財産を贈与する(あげる)ことで、相続の問題を事前に解決することも可能です。贈与をする際には、贈与税に注意する必要があります。

まとめ

遺産分割が進まない場合、まずは家庭裁判所で遺産分割調停や審判を利用することが考えられます。これにより、話し合いや裁判官の判断を通じて解決を図ります。相続放棄は、相続開始後3か月以内に行う必要があり、期限を過ぎた場合は相続分譲渡を検討することができます。相続分譲渡は、財産の権利を他者に譲る手続きで、借金の支払い義務は残るため注意が必要ですので、早めに相続の専門家に相談されることをお勧めします。

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著者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
司法書士法人やなぎ総合法務事務所運営の相続・家族信託相談所