“相続を承認”したとされてしまう場合とは?
今回は相続を承認したとされてしまう場合とはについて解説させていただきたいと思います。
相続放棄を検討している方は法律に定められている事由に該当すると相続を承認したとみなされ相続放棄をすることができない可能性があります。今回は相続を承認したとされてしまう場合について事例を交えて解説します。
目次
1 単純承認をしたものとみなされる場合
法律によれば以下の場合に相続人は、単純承認をしたものとみなされます。
①相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び法律に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
②相続人が法律に定められた期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
③相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
2 ①の具体的な事例
ケース1
Aが亡くなりました。Aは亡くなる前に入院していましたが未払いの入院雑費がありました。Aの子BはAの預貯金から支払いました。
ケース2
Aが亡くなり、Aの子BとCは遺産分割協議をしました。その後、Aは生前に消費者金融から借金をしていることが判明しました。
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときの例は上記の通りです。法律の「処分」とは法律上の処分行為だけでなく、事実上の処分行為も含みます。事実上の処分行為とは具体的に遺産である建物等を取り壊す等が考えられます。なお、葬儀費、仏壇・墓石の購入費を亡くなった方の預貯金で支払う行為は、その額が社会的通念上、相当額として認められる場合は、「処分」にはあたらないこともあります。他にも特定の相続人を受取人と指定する生命保険金を受け取った場合は、相続財産ではないため単純承認したものとはみなされません。
ケース3
亡くなったAは不動産を複数所有していました。Aが亡くなった後、Aの子Bは不動産をCに貸しました。
このケースは賃貸借の期間により相続を承認したとされてしまう場合があります。具体的には以下の期間を超える賃貸者契約をした場合は相続を承認したとされてしまいます。
①樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
②①に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
③建物の賃貸借 3年
④動産の賃貸借 6か月
3 ②の具体的な事例
ケース4
Aが亡くなった後、Aの子BとCは特に何もしないままAが亡くなったことを知ってから3か月が経過した。
法律によると「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」としています。上記の期間は延長できる場合がありますが原則として3か月以内に限定の承認又は放棄をしなければ単純承認をしたものとみなされます。
4 まとめ
今回は、相続を承認したとされてしまう場合についてみてきました。相続に関する手続きは専門性が高く複雑であるため、調査漏れという事態を防ぐためにも、各種専門家にお願いすることが安全であると思われます。
司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、相続に関するご相談や、ご依頼を数多く扱っており、実務においても手続きに経験豊富な司法書士、弁護士、行政書士、税理士、土地家屋調査士、相続診断士、CFP 等の専門家がご依頼の内容に全力で取り組みます。
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著者情報
代表 柳本 良太
- <所属>
- 司法書士法人 やなぎ総合法務事務所 代表社員
- 行政書士法人 やなぎKAJIグループ 代表社員
- やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役
- 桜ことのは日本語学院 代表理事
- LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師
- <資格>
- 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
- 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
- 2009年 司法書士試験合格
- 2010年 行政書士試験合格