今回は司法書士法人やなぎ総合法務事務所でご依頼いただいた相続放棄についてお話しさせていただきます。

「30年前に亡くなり疎遠となっていた親戚の相続人になった場合に相続放棄ができるか」という事例です。

疎遠になっている親戚の相続人になった場合の相続放棄について知りたい方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。

 

目次

インタビュー概要

はじめに今回の事例について紹介させていただきます。

 

インタビュー概要

体験者    Aさん(大阪市/50代/男性)

亡くなった方 X曾祖母の姉(九州)

相続人    Aさん(大阪市/50代/男性)

       Bさん(大阪市/50代/女性)

主な遺産   不動産

相談の内容  ・役所から空き家になっている建物の管理をしてほしいという手紙が届いた

       ・空き家を相続するつもりもなく、解体撤去費用も高額になるため相続放棄をしたい

 

 

 

・受任までの経緯

面談時の簡単な内容は以下の通りです。

面談者:「本日はどの様なご相談でしょうか?」

相談者A:「九州の役所から、あなたはXさんという方の相続人なので、空き家になっている建物の管理をして下さいという手紙が届いたのですが、私はXさんという方を知らないのです。」

面談者:「承知しました。まずは、戸籍を集めてその方との相続関係をお調べしましょう。」

相談者A:「空き家であれば管理のためにお金もかかりますし、建物の場所も九州なので、相続したくないと思っています。」

面談者:「そうなりますと、相続放棄の手続きをすることになります。亡くなったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し出る必要がありますが、この手紙を受け取ったのはいつでしょうか?」

相談者A:「先月届いたので、3週間前になります。妹のBにも同じものが届いているようで、Bも相続したくないと言っています。」

面談者:「それですと、期限まで残り2か月程ですね。A様B様、2名の相続放棄の手続きをさせていただきますね。まずは、大量の戸籍が必要となりますので、急ぎ集め始めましょう。」

 

やなぎ総合法務事務所の対応

以下ではAさんの事例をどのように解決したかについて説明していきます。

戸籍の収集

必要な戸籍は個々の事案によって異なります。事案に応じて適切な戸籍を収集しなければ、「相続放棄ができない」といったことになります。

 

・今回の事例の場合

今回の事例の場合においての必要な戸籍としては、以下のものとなります。

 

〇被相続人(亡くなった方)X 曾祖母の姉

出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

住民票除票又は戸籍附票

 

〇相続人 A・B

戸籍

住民票又は戸籍附票

 

〇第一順位の相続人 Xの子供

出生から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

※Xに子供がいない場合は不要です。今回はXの子供がいないため不要となりました。

 

〇第二順位の相続人 Xの父母、祖父母など

死亡の記載のある戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

 

〇A・Bの父母、祖父母

被相続人と相続人のつながりが分かる戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

死亡の記載のある戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

 

相続放棄申述書の作成

相続放棄をするには家庭裁判所に相続放棄申述書という書面を提出する必要があります。相続放棄申述書の書き方は裁判所のホームページで公開されています。下記は裁判所のホームページで公開されているものと同じものです。

 

 

 

※「死亡を知った日」は、今回死亡を知ったのは市役所の手紙なので、「4」に〇をして、手紙を受け取った日付を記入します。詳しくは家庭裁判所の担当者に確認が必要です。

※「放棄の理由」は、「1」から「5」のなかでに該当するものがある場合は該当する番号に〇をします。今回の事例では「2」に〇をしました。

 

  1. 費用

申述人1人につき収入印紙800円分が必要です。収入印紙は相続放棄申述書に貼り付けます。他にも連絡用の郵便切手が必要ですが各家庭裁判所によって異なります。

 

  1. 申述期間

 いつでも相続放棄ができるわけではありません。法律で期限が決められています。法律は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄をしなければならないとしています。3か月以内に手続きをしない場合は、相続したとみなされるため注意が必要です。

なお、相続放棄の申述期間は延長することができます。詳しくは裁判所のホームページをご覧ください。

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html

 

・今回の事例の場合

今回の事例については、上記に加えて以下の理由のため、「上申書」が必要となりました。

通常の相続放棄とは異なり特殊な事情がある場合、家庭裁判所の判断により上申書が必要となります。

今回、相続放棄の申述をする家庭裁判所の管轄は、被相続人の死亡時の住所により決まりますが、Xさんが亡くなったのは何十年も前のため、死亡時住所の分かる証明書(住民票除票、戸籍の除附票)が市役所の保管期限切れで発行されませんでした。そのため、被相続人の登記簿上の住所地と建物が存在した自治体が同一であることや、市役所からの通知書により被相続人の最後の住所地を推察し、そこを管轄裁判所として申し立てることとなった旨の説明が必要でした。

また、被相続人が死亡したのが30年以上前であるところ、自分が相続人だということを知ったのは市役所からの手紙を受け取った時でした。

この2点により、上申書の提出が必要であると判断しました。

 

上申書の内容

第1 相続の開始を知った日について

被相続人は私の曾祖母の姉にあたりますが、10年前に母が他界し、

***************ため、被相続人の存在を知ることができず、かつ、その相続財産があることを知ることができませんでした。(中略)

第2 本件相続放棄申述申立の管轄裁判所について

   被相続人の最後の住所地について、住民票・戸籍附票の保存期間満了につき、公文書上証明することができません。(中略)

相続放棄受理証明書の請求

相続放棄受理証明書とは、相続放棄した事実を証明するための書類です。

 

相続放棄をしても、相続放棄した事実が必ずしも第三者に明らかになるとは限りませ  ん。第三者に自身が相続放棄したことを示すためには、裁判所で発行される相続放棄受理証明書を取得・提示する必要があります。

 

たとえば被相続人の借金の支払いを要求された場合などには、相続放棄受理証明書を債権者などへ提示すれば、その後督促されることはありません。

 

  1. 相続放棄受理通知書との違い

相続放棄受理通知書と似た書類として「相続放棄受理通知書」があります。

この2つの違いをわかりやすく説明すると下記のようになります。

 

「相続放棄受理証明書」裁判所で相続放棄が受理されたことを証明する書類

「相続放棄受理通知書」相続放棄を受理したことを、裁判所が相続放棄をする人に通知する書類

 

どちらの書類も、債権者など第三者に対し、相続放棄をしたことの証明書として使える場合が多いです。

 

以下で具体的な違いについて説明していきます。

 

2-1. 誰が取得できるのか

「相続放棄受理通知書」は、家庭裁判所が申述人に対して「相続放棄を受理しましたよ」と知らせる書類です。受け取れる人は相続放棄した本人のみであり、利害関係人や他の相続人には送られません。

「相続放棄受理証明書」であれば、申述人本人でなくても、他の相続人や利害関係人が申請手続きをすることで取得可能です。

 

2-2. 取得する方法は

「相続放棄受理通知書」は、相続放棄が受理されると自動的に家庭裁判所が申述人へと送ってくれます。

「相続放棄受理証明書」は申述人や相続人、利害関係人が申請しなければ取得することができません。

 

2-3. 再発行が可能か

「相続放棄受理証明書」は手数料さえ支払えば、何度でも発行してもらえます。

しかし、「相続放棄受理通知書」一度のみしか送られてきません。また、紛失した場合再発行してもらえないので要注意です。

 

※通知書を紛失してしまうと、自分が相続放棄したことを証明するためには、証明書が必要となります。

相続放棄受理通知書をなくしてしまう場合に備えて、早めに相続放棄受理証明書を1通取得して手元に置いておくとよいでしょう。

 

2-4. 取得にかかる費用

「相続放棄受理通知書」は、手続きが完了すると自動的に申述人に送られてくるので、取得費用はかかりません

「相続放棄受理証明書」を取得するには1通150円の手数料がかかります。

 

体験者の感想

 

以下は事件が完了したときのAさんと事務所の担当者との会話です。

 

  担当者:「お預かりしていた書類と取得させていただいた公文書を返却させていただきます。問題がなければ受領書にサインをお願いします。」

 

  Aさん:「ありがとうございます。突然役所から手紙が来たときはびっくりしましたが、無事手続きが終了してほっとしています。ところで、なぜ今回のようなことが起きたのでしょうか?」

 

  担当者:「A様の曾祖母のお姉さまがお亡くなりになった段階で先順位の相続人が相続放棄をする等の相続手続きをされていなかったので相続人が亡くなったら次の相続人へということが繰り返し行われた結果今回のようなことになりました。」

 

  Aさん:「やはり、相続手続きは早めにすべきなのでしょうか?」

 

  担当者:「そうですね。相続手続きを放置すると相続人が増えたり、面識のない相続人の方と遺産分割協議をしなければならないことになるなど、手続きが複雑化し、費用が増加する可能性があるので早めにすることを強くおススメします。」

まとめ

以上が疎遠になっている親戚の相続人になった場合の相続放棄についてのお話でした。ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。

 

事件の概要

 

体験者 Aさん(大阪市/50代/男性)

亡くなった方 X 曾祖母の姉

相続人 Aさん(大阪市/50代/男性)

Bさん(大阪市/50代/女性)

 

相談の内容

 

・市役所から知らない人の建物について、相続人だから菅理をして下さいと手紙がきた。

・相続放棄したい。

 

やなぎ事務所が行ったこと

 

・戸籍の収集、相続人の確定

・X所有の不動産調査

・相続放棄の申述書作成、提出

・上申書の回答補助

 

体験者の感想

 

自分の知らない親戚や財産があるととても不安になったので、自分の子供に自分の死んだ後のことについて話をした方がいいと改めて感じました。

 

今回のケースでは空き家の管理でお金もかかるので放棄したいけど、手続きについて全く分からない。平日は仕事があるので時間がとることもできず、弊所の無料相談を利用してくださり、専門家へ直接相談することで安心にスムーズに相続放棄をして解決することができました。

同じような方はまずは専門家に相談してどう対応していくのがいいか相談して頂くと安心して進めていくことができると思います。

 

今回のケースでは空き家の相続放棄手続きをさせて頂きましたが、相続放棄をする前にその不動産がいくらで売れるか調べてそのまま売却することも弊所グループ会社にて可能です。

 

司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。

 

この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

 

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員

行政書士法人やなぎグループ 代表社員

やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役

桜ことのは日本語学院 代表理事

LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師

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