前回は賃貸経営者が亡くなり、相続人の調査と被相続人の財産調査、相続人が複数いた場合におこなう遺産分割協議までを解説させていただきました。今回は前回の続きで賃貸不動産の相続で注意すべき点につてご紹介させて頂きます。 

 

目次 

賃貸不動産の相続で注意すべき点 

 (1) 亡くなった賃貸経営者の金融口座が凍結される? 

 (2) 金融口座が凍結中にも発生し続ける賃料は? 

 (3) 相続人が決定後、それまでに発生した賃料は? 

 (4) 賃借人や近隣とのトラブルはないか? 

 (5) 凍結された金融口座の解除に必要な書類 

 (6) 準確定申告の支払いについて

 まとめ 

賃貸不動産の相続で注意すべき点 

(1)亡くなった賃貸経営者の金融口座は凍結される? 

賃貸経営者が亡くなった場合、賃貸経営者の金融口座は凍結されます。金融口座が凍結されるタイミングとして、賃貸経営者が亡くなったことを金融機関が知ったときとなります。凍結された金融口座を解除するには遺産分割協議が終わり、マンションやアパートを引き継いだ相続人が、凍結された口座解除の申請書を金融機関に提出することで、金融口座の凍結解除と出入金をすることができるようになります。 

 

(2)金融口座が凍結中にも発生し続ける賃料は? 

賃貸経営者が亡くなり金融口座が凍結された状態であっても賃料は発生し続けています。相続人が複数いる場合には、複数の相続人の中から代表を決め、遺産分割協議が成立してマンションやアパートを引き継ぐ相続人が決定するまでの間、賃借人に賃料の振込先などの変更通知書を送付し、賃料を受け取り管理をするのが一般的とされています。 

 

(3)相続人が決定後、それまでに発生した家賃は? 

最高裁の判決で、「遺産は、相続人が数人ある時は、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生じる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的取得するものと解するのが相当」としています。最高裁は、遺産分割協議中に発生した賃料は相続する人が決まっても法定相続分に分けなさい。という判決です。遺産分割協議内で話がまとまるのであれば協議内容に沿って相続することも可能となっています。しかし、遺産分割協議の内容は簡単に話がまとまることも少なく悩んだときはまず、専門家などに相談してみると良いでしょう。 

 

(4)その不動産、賃借人や近隣とトラブルはないか? 

マンションやアパートを相続するに前に知っておく必要のある注意点が、賃借人や近隣とのトラブルが発生していないかです。賃借人でよくあるトラブルは、隣人の騒音やにおい(異臭)などです。子供が走り回る音、ペットの鳴き声、タバコやゴミのにおいなど、なかでも多くのトラブルになっているのは騒音です。しかし、音やにおいは人によって感じ方に個人差があるので慎重に解決しなければなりません。近隣でのトラブルは施設周辺のゴミの散乱、放置自転車などです。マンションやアパートを相続した際、大家さんが個人で対応する場合にはエントランスに張り紙をしたり、トラブルを起こしている人を厳重注意します。管理会社と契約している場合は管理会社に相談するのがよいでしょう。 

 

(5)凍結された金融口座の解除に必要な書類 

大手金融機関の口座凍結解除に必要な書類は以下となりますが、金融機関ごとに異なるので窓口などでご確認ください。

 

遺言書・遺産分割協議書がない法定相続の場合に必要な書類 

戸籍抄本 口座名義人(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と法定相続人を確認できるすべての戸籍謄本(法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合、戸籍謄本は不要) 
印鑑証明書 法定相続人全員の印鑑証明書 
通帳 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む 

 

遺言書がなく遺産分割協議書がある相続の場合に必要な書類 

遺産分割協議書 銀行に預けている資産を誰が受け取るか明確に記載された書類の原本 
戸籍謄本 口座名義人(被相続人)の戸籍謄本と法定相続人を確認できるすべての戸籍謄本(法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合、戸籍謄本は不要) 
印鑑証明書 法定相続人全員の印鑑証明書 
通帳 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む 

 

遺言書がある場合に必要な書類 

遺言書 銀行に預けている資産の分割割合や承継人が明確に記載された遺言書の原本 
家庭裁判所の検認済証明書 遺言書の存在と内容を家庭裁判所が確認したことを証明する書類(公正証書遺言または自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は不要) 
戸籍謄本 口座名義人(被相続人)の戸籍謄本と相続人を確認できるすべての戸籍謄本(法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合、戸籍謄本は不要) 

※なお、被相続人の死亡した事実と遺贈を受ける者の戸籍謄本等で足りる場合もあります。

印鑑証明書 遺言執行者の印鑑証明書  ※不要な場合もあります。
通帳 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む 

 

 

(6)準確定申告の支払いについて 

準確定申告とは、被相続人が生前おこなっていた確定申告(1月1日~12月31日)の所得税を相続人が代わりにおこなうことです。亡くなった年の1月1日から死亡日までに所得があった場合や、翌年の確定申告をおこなう前に亡くなった場合に相続人が代わり準確定申告として納税します。準確定申告の申告期限は相続が発生した日から4か月以内となります。 

 

準確定申告に必要な書類

・確定申告書 

・被相続人の源泉徴収票 

・被相続人の控除証明書 

・所得税及び復興特別所得税の確定申告付表 

・被相続人の医療費控除の領収書           等

 

必要書類の収集と作成が完了したら税務署に直接提出するか郵送で申告をします。 

 

 

まとめ 

前回と今回の2回にわたり賃貸経営者が亡くなった場合に関する流れと注意点についてお話させて頂きました。金融機関の口座凍結と解除について、遺産分割協議中とその後の賃料のゆくえ、賃借人と近隣トラブルの把握、必要書類など、相続するまでにしなければならないことがたくさんあります。 

 

 

尚、弊所やなぎグループでは、相続関連のご相談・ご依頼を数多くいただいております。豊富な実務経験により、これまで数多くのお悩みを解決しています。 

 

また、当事務所は大阪市阿倍野区あべの筋(天王寺)と東京都渋谷区(恵比寿)に所在し、広範囲でのご相談にも対応可能となっております。 

 

相談員も司法書士のほか、弁護士、税理士、土地家屋調査士、行政書士、相続診断士、CFPなどの様々な士業が在籍・連携しており、お客様に合わせた様々なアドバイスをさせていただきます。 

 

なお、これまでに他の司法書士や弁護士に相談したが、他の専門家にもアドバイスをしてもらいたいといった方のセカンドオピニオン相談も受け付けております。 

相続手続き、遺言の作成、成年後見、任意後見、登記、税金のことなど、どんなお悩みでも結構ですのでお気軽にご相談ください

司法書士法人やなぎ総合法務事務所様