相続税の連帯納付義務について
ご自身の親族や、近しい人が亡くなり発生する相続ですが、その相続財産を受け取った場合、財産額に応じて相続税が課せられることがあります。
この相続税は相続財産を受け取ったすべての相続人が負担することを義務付けられており、納期限までに納付しなければなりません。
しかし、相続人の中に相続税を納めなかった方がいる場合、支払わなかった相続人以外の相続人が連帯債務を課せられることとなり、代わりに支払いを命じられることとなります。
相続税法第34条1項によりますと、相続税の連帯納付義務は「同一の被相続人から相続又は遺贈・・・により財産を取得した全ての者」が負うものと規定しています。
つまり、この連帯納付義務は被相続人から相続財産受け取った人は互いにすべての相続税の連帯納付義務を負うことになります。
そこで今回は、この相続税の連帯納付義務についてご説明させていただきます。
目次
1,相続税の連帯納付義務とは?
相続税は本来その方が受け取った財産額に応じて納める税金です。
相続税は、課税価格の合計額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた課税遺産総額に基づいて,相続人が法定相続分の割合で相続したものと仮定して相続税総額を決定して求めます。
そうして求めた相続税総額に、個々の相続人は自分が相続した財産の割合に応じて相続税を負担するので、自分が支払うべき税金を納付すれば、これで納税義務は果たしたと考えるのが普通です。
しかし、相続税の場合は、他の相続人も同様に納付し、遺産総額に基づいた相続税の総額がすべて納付されないかぎり、納税義務から逃れることはできないのです。
これを相続税の連帯納付義務といいます(相法34条1項)
2,連帯納付手続きの流れ
⑴ 本来の納税義務者(相続税を支払っていない相続人)に対する督促
まず初めに納期限までに相続税が支払われていない場合、税務署から本来の納税義務者(相続税を支払っていない相続人)へ督促状が送付されます。
⑵ 【納税がない場合】連帯納税義務者への通知
本来の納税義務者(相続税を支払っていない相続人)が督促状送付後1カ月経過しても納税しない場合には、税務署長等は、連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)に対し「完納されていない旨のお知らせ」を送付します(相法34⑤)。
⑶ 連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)に納付通知書の送付
税務署長等は、⑵の通知をした場合において、その通知に係る相続税を連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)から徴収しようとするときは、その連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)に対し、納付すべき金額、納付場所その他必要な事項を記載した「納付通知書」(連帯納付義務の通知)による通知を行います(相法34⑥)
⑷ 【納税がない場合】連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)に対する督促
税務署長等は、連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)が「納付通知書」が届いてから2か月経過しても納税しない場合は、連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)に対し国税通則法に規定する督促を行います(相法34⑦)。
⑸ 財産の差押え(徴収法47)
それでも納税が行われない場合、財産の差押え等の滞納処分が行われます。
差押えの対象となる財産については、本来の納税義務者(相続税を支払っていない相続人)の財産もしくは、連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)の財産となりますが、差押えの順序に明確な規定はありません。
そのため税務署の判断によっては、連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)の財産が差押さえられる場合があります。
3,連帯納付義務へ相続税の支払い通達が届いた場合
相続財産税の分割が終わり、ご自身の納税も終わり一安心。
と、思いきや上記のトラブルにより「相続税の連帯納付義務のお知らせ」が届いたらもちろん驚かれますよね。
こんな時、どうすればいいのか対処法についてご紹介します。
⑴ 本来の納税者(相続税を支払っていない相続人)が納税を忘れていた場合
当たり前ですが、なぜ支払われていないのか?ご本人に確認をする必要があります。
未納税者の中には忙しくて「忘れていた」「忙しく納税が間に合わなかった」という方もいらっしゃいます。
この場合にはご本人に速やかに納税していただく事で問題は解決します。
⑵ 本来の納税者(相続税を支払っていない相続人)に支払い能力がない場合
相続人の中には、現金以外の財産だけを相続(不動産など)する方がいらっしゃい
ます。
その方に預貯金など現金がなく、支払いができない状態にあった場合、納税は難しくなります。
そうした場合には、相続した不動産を担保に借り入れを検討したり、売却を
検討する必要があります。
4、相続税の納税義務者は誰?
相続税を納める義務があるのは以下の通りです。
納税義務者①
相続又は遺贈により財産を取得した者で日本に住所を有する者
(上記の人が一時居住者である場合は、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)
●対象財産
取得したすべての財産
納税義務者②
相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時において日本に住所を有しないもの。
日本国籍を有する個人であって次に掲げるもの
(1)当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時において日本に住所を有していたことがあるもの
(2)当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においても日本に住所を有していたことがないもの(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
ロ 日本国籍を有しない個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
●対象財産
取得したすべての財産
納税義務者③
相続又は遺贈により日本にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの日本に住所を有するもの(①に掲げる者を除く。)
●対象財産
日本国内にある財産
納税義務者④
相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(②に掲げる者を除く。)
●対象財産
日本国内にある財産
納税義務者瑚➄
上記①~④のいずれにも該当しない人で贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した人
●対象財産
相続時精算課税の適用を受ける財産
5、相続人以外で相続税の納税義務者となるケース
相続が発生した場合、遺言に従って法定相続人以外の方が財産を受け取る場合があります。このことを「遺贈」といいます。遺贈の受遺者は相続人ではない場合もありますが納税義務者となります。
死因贈与は、贈与者と受贈者で、贈与者が死亡したときに財産を受贈者に贈与するという贈与契約です。この場合も受遺者は相続人ではない場合もありますが納税義務者となります。
6、まとめ
納税は国民の義務です。
相続税についても同様に、必ず納めなければならず、払えない場合にはその他の相続人が支払うこととなっています。
相続税の場合、「自分の納税は済ましたのだから大丈夫」と安易に考えていると、自分以外の相続人が納税しなかった場合に、税務署長等から財産の差押えを行われるかもしれませんので、注意が必要です。
上記に述べたようなトラブルが起きる1番の理由は相続財産分割時に、納税も視野に入れた分割が行われていない事が原因と考えられます。
そのためにも、相続が発生した際には専門家に相談し、遺産分割協議書をしっかり作成する事をお勧めしています。
弊所やなぎグループでは、今回ご説明させていただいた相続税に関わるご相談のほか、遺産分割協議書の作成や、残された家族が争う事の無いよう、生前対策についても無料で相談対応させていただいております。
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著者情報
代表 柳本 良太
- <所属>
- 司法書士法人 やなぎ総合法務事務所 代表社員
- 行政書士法人 やなぎKAJIグループ 代表社員
- やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役
- 桜ことのは日本語学院 代表理事
- LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師
- <資格>
- 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
- 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
- 2009年 司法書士試験合格
- 2010年 行政書士試験合格