生活保護受給者の相続について
生活保護を受けているので自分には相続は関係ないと思われている方がおられます。生活保護を受けている方でも相続の権利を失うわけではありません。しかし、生活保護を受けている場合には、いくつかの注意点がありますので、今回は生活保護受給者が相続人となった場合の注意点について解説します。
目次
- 1.生活保護の人は相続できる?
- 2.遺産を相続したら、生活保護が受けれなくなる?
- 3.生活保護受給者は相続放棄をできるの?
- 4.生活保護を受けながら相続できるもの・放棄できるもの
- 5.生活保護受給者が相続人となった場合の注意点
- 6まとめ
1.生活保護受給者でも相続はできるの?
結論から言いますと、生活保護受給者でも相続することはできます。
相続人としての権利は、本人や周りの意思に関係なく、民法に従い当然認められます。また、相続人としての身分を離脱する場合は、相続放棄の手続きをしなくてはなりません。ただし、相続放棄する場合、被相続人の死亡および自分が相続人であるという事実を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。しかし、生活保護受給者の場合、相続放棄について注意をする必要があります。
2.遺産を相続したら、生活保護が受けれなくなる?
生活保護受給者も、相続人として遺産を相続することができます。相続によって遺産を手にすれば、借金や債務でない限り生活保護受給者の財政状況が少なからず改善することになります。生活保護法では、生活保護受給者に対して4つの義務を求めています。
1.生活上の義務(生活保護法60条) 被保護者は、自分でできる範囲で収入を得たり 家計の改善に努めること。 2.届出の義務(生活保護法61条) 家計や家族状況、居住地の変更等があった場合には、 すみやかに届け出ること。 3.指示等に従う義務(生活保護法62条) 保護施設等への入居等に関する指示に従うこと。 4.費用返還義務(生活保護法63条) 資力があるにも関わらず保護を受けた場合には、 その保護費を返還すること。 |
上記のうち、遺産相続と生活保護の関係では、2と4の2つが重要となります。
生活保護法61条、生活保護受給者は、遺産相続によって家計に変更があった場合、その旨を届け出なければなりません。生活保護受給中は、収入の状況を毎月申告しなくてはならず、必然的に届け出ることになります。遺産相続を行ってもなお、生活を送ることが困難と認められた場合、生活保護の支給は継続されることになります。また、遺産を十分に手にしたにも関わらず、相続の事実を隠して不正に生活保護を受けた場合、生活保護法63条によって生活保護費を返還しなければならない可能性が高いです。
3.生活保護受給者は相続放棄をできるの?
生活保護を継続するために、相続放棄をすることは原則として認められません。上記でも述べたように、遺産相続を行ってもなお、生活することが困難であり、不足が生じるという人にのみ、生活保護が認められています。生活保護の受給者が相続放棄によって、得られたはずの資産を手放してしまうと、生活保護費の要件を満たせず、生活保護の受給が継続できなくなってしまいます。ただし、被相続人の借金が多い場合や、処分が難しく所有することで費用がかかるような不動産等がある場合には、相続放棄をしたうえで生活保護受給を継続することも認められます。
4.生活保護を受けながら相続できるもの・放棄できるもの
前述したように原則として生活保護受給者が相続放棄をすることは認められていません。ただし、被相続人の借金が多い場合や、処分が難しく所有することで費用がかかるような不動産等がある場合には、相続放棄をすることが認められています。
5.生活保護受給者が相続人となった場合の注意点
前述した中で注意点をまとめると以下の通りです。
・遺産相続によって家計に変更があった場合、その旨を届出ること
・遺産を十分に手にしたにも関わらず、相続の事実を隠して不正に生活保護を受けた場合、生活保護費を返還しなければならないこと
・原則として相続放棄をすることは認められていないが例外があること
6.まとめ
生活保護受給者であっても遺産を相続することができます。しかし、原則として生活保護の受給を継続するための相続放棄を行うことはできません。 遺産相続をする場合や相続放棄をする場合には、さまざまな要素を考慮する必要があるため、お困りの際は、専門家などに相談してみることをおすすめします。
今回は、生活保護受給者が相続人の場合の注意点について解説させて頂きました。司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、相続に関するご相談や、ご依頼を数多く扱っており、実務においても、相続に関して経験豊富な司法書士、弁護士、行政書士、税理士、土地家屋調査士、相続診断士、CFP 等の専門スタッフがご依頼の内容に全力で取り組みます。
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著者情報
代表 柳本 良太
- <所属>
- 司法書士法人 やなぎ総合法務事務所 代表社員
- 行政書士法人 やなぎKAJIグループ 代表社員
- やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役
- 桜ことのは日本語学院 代表理事
- LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師
- <資格>
- 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
- 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
- 2009年 司法書士試験合格
- 2010年 行政書士試験合格