近年、医療の進歩などにより平均寿命が大きく伸び、人生100年時代ともいわれるようになりました。このような時代となり寿命は延びたものの、認知症、介護、老後資金、相続、遺産、といった長寿ならではの問題が深刻化しています。誰にでも起こりうる問題を最小限に抑え、安心して老後や相続を迎えるためには、元気なうちに将来を見据えて生前対策をすることがとても重要となります。
生前対策には「任意後見」「遺言書」「生前贈与」「家族信託」といったいくつかの方法がありますが、自分の叶えたい未来を実現するためには、このいくつかの方法を理解していただき今後の生前対策として役立てて頂ければと思います。。
任意後見
任意後見制度とは、将来的に自身の判断能力が低下することを見据えて、本人(被後見人となる)の判断能力があるうちに自分の財産を管理してもらう人(後見人)を事前に決めておく「制度」です。この制度は、認知症、知的障害といった精神疾患が原因となり判断能力が低下してしまった人の財産を保護するために設けられました。そして後見人(任意後見人) になった方は、家庭裁判所によって選ばれる任意後見監督人の監督のもとで、本人との間で結んだ契約に則って本人の財産保護や管理を行うことになります。この後見人は、親族はもちろんのこと、信頼のできる第三者を選任することも可能となっています。
遺言書
遺言書とは、自分の死後に効力を発生させる目的で、あらかじめ書き残しておく意思表示した書類です。この遺言書がない場合、民法で定められた「法定相続人」と「法定相続分」をもとにして、多くの方はここで財産をどう分けるか等を書き残します。「遺産分割協議」で話し合い、遺産相続を行うことになります。しかし、遺産分割協議は、相続人全員の同意を得なければならず、その財産をめぐり争いが発生することも少なくありません。遺言書を作成しておけば遺産の相続割合を自分で決めることができ、家族間の争いを防ぐことができるかもしれません。遺言は厳格に定めたられた形式がありますので、せっかく書いた遺言も無効となってしまうことがあります。遺言を検討される場合には、ぜひ専門家の無料相談等を上手にご活用下さい。
生前贈与
生前贈与とは、生きている間に誰かに無償で財産を譲ることを贈与といいます。通常の場合、亡くなった方の財産を相続すると「相続税」が発生します。生前贈与は、相続税による税負担を軽減することを目的として行われます。父母または祖父母の財産を相続税が発生する前に、生前贈与という形で贈与することで、遺産相続が発生したときの課税対象となる相続財産が少なくなり、結果的に相続税の負担軽減が期待できます。ただし、贈与の場合、受け取った側に対して「贈与税」が発生し、贈与税は相続税よりも税率が高くなってしまう点に注意が必要です。にもかかわらず、相続税対策として生前贈与が注目されている理由は、この特例制度を、有効活用して税金を安くすることが出来るからです。どの制度を利用するのが一番お得かは、その方の状況により異なりますので、よく調べてから活用しましょう。
a.暦年課税制度(暦年贈与)
b.相続時精算課税制度
家族信託(民事信託)
家族信託とは比較的新しくできた制度であり、生前対策として近年とくに注目されております。たとえば、この制度を利用すると、所有者である親の認知症などの影響を受けずに、子に預けられた(信託)された財産の管理、運用、処分が可能となります。
認知症などによって自分に判断能力がなくなった場合、本来は不動産の売却や貯金の引き出しなどができなくなってしまいますが、これらを回避することができます。また、自分の判断能力がなくなったときに、ペットや障害のある子供の世話をしてくれる人がいなくて不安といった場合などの問題を解決できます。
ただし、家族信託は、専門家のなかでも難易度が高く、相談するにも詳しい専門家がなかなか見つからないというのが現状です。弊所では、家族信託に詳しい専門家がおりますので、ご安心してご相談ください。
まとめ
所有する財産や親族との関続や意思能力の低下について、事前に対策することで、安心して老後や相続を迎えることができます。ご自身にはどの生前対策が合っているかを考えてみるとよいでしょう。また、ご不安や悩み事があった場合には専門家に相談してみることをおすすめします。
司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、生前対策に関するご相談や、ご依頼を数多く扱っており、実務においても手続きに経験豊富な司法書士、弁護士、行政書士、税理士、土地家屋調査士、相続診断士、CFP 等の専門家がご依頼の内容に全力で取り組みます。