今回は遺産分割協議書について解説していきたいと思います。

「相続の手続きには遺産分割協議書が必要」と聞いた方がおられると思います。しかし、「遺産分割協議書ってどうやって書くの?」、「どの手続きでいるの?」等、様々な疑問を持たれる方が多いと思います。

そこで今回は「遺産分割協議書」の入手先・書き方・提出先等基本的なことから説明していきたいと思います。

これから遺産分割協議書を作成しようとしている方等の参考になれば幸いです。

1 『遺産分割協議書』の入手先について

 1-1 遺産分割協議書は役所で手に入るの?

遺産分割協議書は市役所等で取得することはできません。遺産分割協議書は自身で作成するまたは専門家に依頼して作成してもらう必要があります。

 1-2 どの専門家に頼めばいいの?

 「自分で作成するのは不安です。」という方が多いと思います。しかし、「どの専門家に頼めばいいかわからない」という方も多いと思われます。以下の表は遺産分割協議書を頼める専門家の一覧です。

弁護士・制限なく遺産分割協議書作成可能

・遺産分割について紛争が生じている場合も他の相続人との調整や交渉等が可能

司法書士・相続財産に不動産がある場合に作成可能

・遺産分割について140万円を超えない範囲で紛争が生じている場合、認定司法書士のみが他の相続人との調整や交渉等が可能

行政書士・制限なく遺産分割協議書作成可能

・遺産分割の紛争等について関与できない

税理士・相続税申告に必要な場合に作成可能

・遺産分割の紛争等について関与できない

 

2 『遺産分割協議書』の書き方について

「自分で作りたい。でも、書き方がわからない。」と思う方も多いと思います。そこでこの節では遺産分割協議書の書き方について説明します。

 

2-1 遺産分割協議書作成前の準備と遺産分割協議書が不要な場合

 遺産分割協議書の作成は相続に必要な戸籍と相続財産がわかる資料(不動産は登記簿謄本、預貯金の場合は残高証明書)が入手出来ていることが前提です。なぜならば、遺産分割協議は相続人全員でする必要があり、戸籍により相続人を確定する必要があるからです。相続財産がわかる資料は遺産分割協議書に相続財産の情報を具体的に記載するためです。

また、遺産分割協議書を提出する際は印鑑証明書も併せて提出することを求められます。印鑑証明書の有効期限は提出先によって異なるため注意が必要です。

なお、遺産分割協議書は不要な場合があります。例えば相続人が1人の場合や遺言書に基づいて手続きをする場合などです。

2-2 亡くなった人の情報を記載する

まずは亡くなった人の情報を記載します。具体的な例は以下のとおりです。

被相続人 法務太郎(令和5年3月14日死亡)

最後の本籍 大阪市阿倍野区・・・・・

最後の住所 大阪市阿倍野区・・・・・

登記簿上の住所 大阪市阿倍野区・・・

 

被相続人とは亡くなった方のことです。登記簿上の住所は亡くなった方が不動産を所有している場合のみ記載します。

 

2-3 不動産がある場合の遺産分割協議書の書き方

相続財産に不動産がある場合の具体例は以下のとおりです。

被相続人の次の不動産は、相続人 法務花子が取得する。

不動産番号 

所   在 大阪市・・・・

地   番 1番1

地   目 宅地

地   積 85.64㎡

不動産番号 

所   在 大阪市・・・・

家屋番号  1番1

種   類 居宅

構   造 軽量鉄骨造スレート葺2階建

床 面 積 1階 51.46㎡

      2階 51.32㎡

 

不動産がある場合の遺産分割協議書の書き方のポイントは不動産の登記簿情報を記載してどの不動産かをしっかり特定することです。つまり、不動産登記簿を取得する必要があります。不動産登記簿の取得方法についてはブログ(https://yanagi-law.net/blog/8839)を参考にしていただければ幸いです。

 

2-4 預貯金がある場合の遺産分割協議書の書き方

相続財産に預貯金がある場合の具体例は以下のとおりです(以下の具体例はあくまで預貯金のみがある場合の例であり、それ以外のものについては含めていません)。

次の預貯金は,相続人法務花子,相続人法務次郎が各2分の1ずつ取得する。なお,振込手数料は各相続人の負担とする。

【預貯金(預金債権)の表示】

(1)ゆうちょ銀行  通常貯金   記号番号 12345-67891011

(2)○○銀行 △△支店 普通預金 口座番号 1234567

(3)その他,被相続人名義の一切の預貯金(預金債権)及びこれに付帯する利息金

 

預貯金がある場合の遺産分割協議書の書き方のポイントは預貯金の口座を特定することです。ゆうちょ銀行の場合は貯金の種別と記号番号、その他の金融機関の場合は銀行名・支店名・預金の種別・口座番号で特定します。

2-5 相続人の住所・署名・押印

遺産分割協議書の最後に相続人の住所を記載して署名・押印をします。以下は具体例です。

(法務太郎 相続人 法務花子 様)

 (住  所) 大阪市・・・・

 (氏  名)        【署名】                       

(法務太郎 相続人 法務次郎 様)

  (住  所) 大阪市・・・・・・・・・

                

  (氏  名)       【署名】

 

2-6 遺産分割協議書の書き方・サンプル

 

 上記をまとめて記載すると以下のようになります。

遺産分割協議書

被相続人 法務太郎(令和5年3月14日死亡)

最後の本籍 大阪市阿倍野区・・・・・

最後の住所 大阪市阿倍野区・・・・・

登記簿上の住所 大阪市阿倍野区・・・

上記被相続人の遺産について,共同相続人間において遺産の分割について協議をした結果,次のとおり決定した。

第1条 被相続人の次の不動産は,相続人 法務花子が取得する。

不動産番号 

所   在 大阪市・・・・

地   番 1番1

地   目 宅地

地   積 85.64㎡

不動産番号 

所   在 大阪市・・・・

家屋番号  1番1

種   類 居宅

構   造 軽量鉄骨造スレート葺2階建

床 面 積 1階 51.46㎡

      2階 51.32㎡

第2条 次の預貯金(預金債権)・出資金並びにこれに付帯する利息金・配当金は,相続人法務花子,相続人法務次郎が各2分の1ずつ取得する。なお,振込手数料は各相続人の負担とする。

【預貯金(預金債権)の表示】

(1)ゆうちょ銀行  通常貯金   記号番号 12345-67891011

(2)○○銀行 △△支店 普通預金 口座番号 1234567

(3)その他,被相続人名義の一切の預貯金(預金債権)及びこれに付帯する利息金

第3条 本遺産分割協議書に記載のない遺産並びに後日判明した遺産について,相続人全員は,別途協議の上,定めるものとする。

 以上のとおり,相続人全員による遺産分割協議が成立したので,これを証するため本書を作成し,署名捺印する。

令和  年  月  日

(法務太郎 相続人 法務花子 様)    

 (住  所) 大阪市・・・・

 (氏  名)        【署名】                       

(法務太郎 相続人 法務次郎 様)

  (住  所) 大阪市・・・・・・・・・

                

  (氏  名)       【署名】

 

3 『遺産分割協議書』の提出先について

 遺産分割協議書の主な提出先は以下の表のとおりです。

財産の種類提出先
不動産法務局
預貯金金融機関
有価証券証券会社等
自動車陸運局
税金税務署

 

上記以外でも相続手続の多くにおいて遺産分割協議書の提出が求められるので、手続き先に提出書類を確認したうえで手続きをしてください。

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著者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
司法書士法人やなぎ総合法務事務所運営の相続・家族信託相談所