相続財産に預貯金や有価証券等がなく土地や建物の不動産しかない場合は、遺産分割協議やその他の手続きについては注意が必要です。

本記事では、不動産のみの相続財産について、遺産分割の手続きについてのポイントや、手続きの順序について解説します。

遺産が不動産のみでどうしたらいいのかわからない方等の参考になれば幸いです。

目次

相続財産とはなにか

「相続財産って何?」という方も多くおられると思います。「相続財産」とは、亡くなった人が遺した財産のことです。主な相続財産の種類としては、不動産、預貯金、有価証券、現金、自動車、家具家電、貴金属、債権などがあげられます。

 

「土地(不動産)」のみが相続財産の場合のポイント

不動産のみの相続財産の場合、遺産分割においては、特に注意が必要です。

なぜなら、不動産は資産価値が高く、相続人間で分割が困難な場合があるからです。

お金の様に綺麗に等分するのが難しく、兄弟で相続争いになり、弁護士を入れて裁判になるケースもあります。そうならに為にも話し合いが大切です。

①相続人の確認

遺産分割をする前に「相続人は誰か?」ということを確認する必要があります。

なぜならば遺産分割は相続人全員でする必要があるからです。

相続人でない人が遺産分割協議をした場合または相続人が遺産分割協議に参加していない場合は遺産分割が無効になります。

②相続財産の調査

次に、相続財産の調査を行います。遺産分割をする前に「何を分割するのか?」がわからなければ遺産分割をすることができません

今回は不動産の調査方法のみ説明します。

 

不動産の調査は名寄帳の取得をすることでできます。

 

「名寄帳とは」

市区町村が作成している固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめたものです。

例えば、Aさんの名寄帳をX市に請求した場合AさんがX市に持っている不動産がすべて記載されます。見本は以下の通りです(大阪市の場合)。

 

名寄帳取得に必要な書類は

  • ①身分証明書(運転免許証等)
  • ②亡くなった方の死亡の記載のある戸籍と相続人(書類を作成する方)の現在戸籍
  • ③請求書
  • ④手数料(各自治体によって異なります)です。

申請書の記載例は以下のとおりです(大阪市の場合です)。

 

③遺産分割協議書の作成

相続人が確定して、相続財産の調査が完了したら、相続財産をどう分けるか話し合います。この話し合いを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議の内容を書面にしたものを遺産分割協議書といいます。遺産分割協議書は、後に発生するトラブルを防止するためにも、正確に作成する必要があります。以下は遺産分割協議の記載例です。

 

遺産分割協議書

被相続人 法務太郎(令和5年3月14日死亡)

最後の本籍 大阪市阿倍野区・・・・・

最後の住所 大阪市阿倍野区・・・・・

登記簿上の住所 大阪市阿倍野区・・・

上記被相続人の遺産について,共同相続人間において遺産の分割について協議をした結果,次のとおり決定した。

第1条 被相続人の次の不動産は,相続人 法務花子が取得する。

不動産番号 

所   在 大阪市・・・・

地   番 1番1

地   目 宅地

地   積 85.64㎡

不動産番号 

所   在 大阪市・・・・

家屋番号  1番1

種   類 居宅

構   造 軽量鉄骨造スレート葺2階建

床 面 積 1階 51.46㎡

      2階 51.32㎡

(以下略)

④その他気を付けるべきポイント

その他気を付けるべきポイントは「不動産をどのように分けるか?」です。

方法としては

  • ①相続人の1人がすべて取得する
  • ②相続人の1人が名義人になり売却し、売却代金を分配する
  • ③相続人全員又は一部で共有にする

が考えられます。

 

 しかし、③はお勧めできません。

なぜならば共有になると不動産を使用・収益・処分する際、他の共有者との折衝が必要となり、意見が合わない場合にはトラブルに発展する可能性があるからです。

できるならば上記①②の方法ですることが望ましいといえます。

 

相続財産が不動産のみの場合でも相続税が課せられる場合があります。相続税は、適切に申告しないと法的な問題が生じる可能性がありますので、正確に申告しましょう。詳しくはお近くの税理士または税務署に相談することをお勧めします。

「土地(不動産)」の名義変更のやり方と注意点

どこに申請するの?

不動産の名義変更の申請先は決まっています。申請先は名義変更をする土地を管轄する法務局です。大阪府の管轄は以下のとおりです。(他の法務局については法務局のホームページをご覧ください。(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html))。

 

大阪法務局(本局)大阪市の内

中央区、旭区、城東区、鶴見区、浪速区、西成区

大阪法務局北出張所大阪市の内

都島区,福島区,此花区,西区,

港区,大正区,西淀川区,

東淀川区,淀川区,北区

大阪法務局天王寺出張所大阪市の内

天王寺区、生野区、東成区、東住吉区、阿倍野区、住之江区、平野区、住吉区

大阪法務局池田出張所池田市、豊中市、箕面市、

豊能郡(豊能町、能勢町)

大阪法務局枚方出張所枚方市、寝屋川市、交野市
大阪法務局守口出張所守口市、門真市
大阪法務局北大阪支局吹田市、高槻市、茨木市、摂津市、三島郡島本町
大阪法務局東大阪支局東大阪市、大東市、四條畷市、八尾市、柏原市
大阪法務局堺支局堺市、松原市、高石市、大阪狭山市
大阪法務局富田林支局富田林市、河内長野市、羽曳野市、藤井寺市

南河内郡(太子町、河南町、千早赤阪村)

大阪法務局岸和田支局岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、

和泉市、泉南市、阪南市、泉北郡忠岡町、

泉南郡(熊取町、田尻町、岬町)

 不動産の名義変更の必要書類とは?

不動産の名義変更に必要な書類は多くあります。必要書類の収集の際に気を付けるべきポイントについて説明していきます。

戸籍

必要な戸籍は個々の事案によって異なります。事案に応じて適切な戸籍を収集しなければ、「相続人が誰かを確定できない」「名義変更の申請が通らない」といったことになります。以下の表は戸籍について必要な書類をまとめたものです。

 

相続人が配偶者と子・亡くなった方の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・相続人の戸籍謄本

・亡くなった方の住民票除票又は戸籍附票

・相続人の住民票又は戸籍附票

相続人が配偶者と直系尊属(親・祖父母)・亡くなった方の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・相続人の戸籍謄本

・亡くなった方の住民票除票又は戸籍附票

・相続人の住民票又は戸籍附票

相続人が配偶者と兄弟姉妹・亡くなった方の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・亡くなった方の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(亡くなった方の出生時から死亡時までのすべての戸籍と重複するものは不要)

・相続人の戸籍謄本

・亡くなった方の住民票除票又は戸籍附票

・相続人の住民票又は戸籍附票

 

亡くなった方の住民票除票又は戸籍附票を取得する際に注意することは亡くなった方の最後の住所と登記簿上の住所が一致するかという点です。亡くなった方の最後の住所と登記簿上の住所が一致しない場合は登記簿上の住所から亡くなった方の最後の住所まで移転したことがわかる住民票除票又は戸籍附票が必要です。

 

仮に亡くなった方の最後の住所まで移転したことがわかる住民票除票又は戸籍附票が保存期間の経過等により取得できない場合は、名義変更をする不動産の登記済書又は登記識別情報(俗にいう権利証)若しくは上申書という書類を作成する必要があります。また、亡くなった方の住民票除票又は戸籍附票は本籍地入りのもが必要となるので注意が必要です。

申請書のひな形

下記は法務局が公開している申請書のひな形を編集したものです。(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

登 記 申 請 書

登記の目的  所有権移転

原 因    令和1年6月20日相続(注1)

相 続 人 (被相続人 法 務 太 郎)(注2)

○○市○○町二丁目12番地

法 務 花 子 ㊞

  連絡先の電話番号00-0000-0000

添付情報

 登記原因証明情報(注3) 住所証明情報

令和1年7月1日申請 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)

課税価格  金2,000万円

登録免許税 金8万円(注4)

不動産の表示

不動産番号 1234567890123

所 在 ○○市○○町一丁目

地 番 23番

地 目 宅地

地 積 123・45平方メートル

不動産番号 0987654321012

所 在 ○○市○○町一丁目23番地

家屋番号 23番

種 類 居宅

構 造 木造かわらぶき2階建

床 面 積 1階 43・00平方メートル

         2階 21・34平方メートル

(注1)亡くなった方のお亡くなりになった日を記載します。

(注2)( )は亡くなった方のお名前その下は名義人となる方の住所氏名を記載します。

(注3)遺産分割協議書・戸籍のことです。

(注4) 登録免許税は不動産の価額×1000分の4した額が必要となります。なお、土地の価額が100万円以下の場合は非課税となります。100円未満は切り捨てます。

 

まとめ

以上が、遺産相続が土地(不動産)しかない場合の手続きについてのお話でした。

ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。

 

相続財産とは?「相続財産」とは、亡くなった人が遺した財産のこと
不動産のみが相続財産の場合のポイント
  1. 相続人の確認
  2. 相続財産の調査

は遺産分割協議書を作成する前にする必要がある。

・不動産は相続人の1人がすべて取得するまたは相続人の1人が名義人になり売却し、売却代金を分配するという方法で分けるのがオススメ

不動産の名義変更のやり方・事案に応じて適切な戸籍を収集する必要がある。

・不動産の名義変更の申請先は名義変更をする土地を管轄する法務局

 

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代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
司法書士法人やなぎ総合法務事務所運営の相続・家族信託相談所