相続の相談風景

今回は兄弟姉妹の配偶者が相続分を要求してきた場合について説明していきます。

亡くなった方の財産をどのように分けるか話し合いをしていると、相続権がない兄弟姉妹の配偶者が相続割合を増やすように要求する場合があります。

このような場合にどのように対応すればいいかわからない方が多いと思います。

そこで今回は兄弟姉妹の配偶者が相続分を要求してきた場合の対処法について説明していきますので、上記のような状況でお困りの方の参考になれば幸いです。

 

目次

兄弟 ・ 姉妹の配偶者とは「どこまで」「だれ」を指すのか

「兄弟相続の配偶者って誰のこと?」という疑問を持たれる方も多いと思われるのでケース別に兄弟姉妹の配偶者とは具体的に誰を指すか説明していきます。

亡くなった方の配偶者と子が相続人の場合

事例1

Aには配偶者(夫または妻のことをいいます。)であるB、AとBの子供であるCとDがいます。CはEと結婚、DはFと結婚していました。Aが令和5年4月20日に亡くなりました。

 

 

この場合、Cの配偶者であるE、Dの配偶者であるFが「兄弟姉妹の配偶者」となります。

 

亡くなった方の配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合

事例2

Aには配偶者(夫または妻のことをいいます。)のBがいますが、AとBの間に子はなく両親と祖父母も既に他界していますが弟のCがいます。CはDと結婚していました。Aが令和5年4月20日に亡くなりました。

 

 

この場合、Cの配偶者であるDが「兄弟姉妹の配偶者」となります。

 

兄弟 ・ 姉妹の「相続問題」でよくある相談の内容

 配偶者が遺産分割について口出ししてくるケース

 「先日私の母が亡くなりました。母の家の整理と形見分けのために私と兄の妻が母の家に集まりました。
その時に遺産の分け方について話し合って、兄が「半分で分けよう」と言ったのですが、兄の妻が「長男だからもっともらうべきではないのか」といい、
兄が渋ると兄の妻が「これから子供の学費でお金が・・・」
などと夫婦で喧嘩が始まり、話がまとまりません。どうしたらいいでしょうか?」

 

 配偶者が寄与分を主張場合

「先日、父が亡くなり、私と兄で遺産の分け方について話し合いました。そこに兄の妻が同席していて、兄の妻が「私が、お義父さんの介護をしていたのだから、夫の相続分は多めにするべきだ」と言いました。

しかし、私は兄の妻が介護をしていたかも知りませんし、介護をしていたとしてもどのくらいしていたのかもわかりません。どうしたらいいのでしょうか?」

 

兄弟・姉妹の配偶者が相続分を要求する権利はあるか?

 「そもそも、兄弟姉妹の配偶者に相続分を要求する権利はあるか?」
という疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで兄弟姉妹の配偶者が相続分を要求する権利があるのかについて説明していきます。

 

兄弟姉妹の配偶者が相続分を要求する権利はあるか?

 法律で定められている相続人は以下のとおりです。

亡くなられた方に配偶者と子がいる場合配偶者と子
亡くなった方に配偶者がいて、かつ子はなく、父母(祖父母)が健在の場合配偶者と父母(祖父母)
亡くなった方に配偶者がいて、かつ子・父母(祖父母)はなく、兄弟姉妹が健在の場合配偶者と兄弟姉妹

 

上記の表のとおり兄弟姉妹の配偶者は相続人ではないため、相続分を要求する権利はないということになります。

 

兄弟姉妹の配偶者が相続財産を取得できる場合(その1)

 兄弟姉妹の配偶者が相続財産を取得できる場合があります。
例えば”特別寄与料の請求”です。

 

民法第1050条

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

 

具体的には上記事例1の場合
Eが亡くなったAの介護等を無償で行っていた場合相続人(事例1の場合、B・C・D)に金銭を請求することができるということです。

しかしこの制度は、相続人となるわけでないので、遺産分割協議に参加することができるわけではありません。

兄弟姉妹の配偶者が相続財産を取得できる場合(その2)

 他にも兄弟姉妹の配偶者が相続財産を取得できる場合があります。
具体的には特別縁故者に対する相続財産の分与の請求があります。

 特別縁故者に対する相続財産の分与の請求の制度は亡くなった方の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者が相続人のいない場合に家庭裁判所に申し立てることで相続財産の全部または一部を得ることができる制度です。
この制度は相続人がいない場合にのみに適用される制度のため注意が必要です。

兄弟・姉妹の配偶者が相続分を要求してきた場合の対処法

兄弟姉妹の配偶者が相続分を要求する権利はないことはここまでのお話で説明してきました。

しかし「相続分を要求する権利はなくても相続分を要求する兄弟姉妹の配偶者にどの様に対処すればいいの?」という疑問を持たれる方が多いと思います。

以下では兄弟姉妹の配偶者が相続分を要求した場合の対処法について説明していきます。

相続人が誰かを確定する

 対処法の一つとして「相続人が誰かを確定する」ことがあげられます。

戸籍を収集して相続人が誰かを確定することで兄弟姉妹の配偶者が相続人でないことを明確にします。

そして、相続分を要求している兄弟姉妹の配偶者に相続人でないこと、相続分を要求しないように伝えましょう。

亡くなった方の財産の分け方については相続人だけで話し合う

 亡くなった方の財産の分け方については相続人だけで話し合いましょう。
兄弟姉妹の配偶者と一緒に話し合いをすると、兄弟姉妹の配偶者に相続分を要求する機会を与えることになります。

寄与の有無を確認する

兄弟姉妹の配偶者が寄与分を主張する場合があると思います。
この場合、まずは、寄与の有無(亡くなった方の介護等をしていたか)を確認する必要があります。調査の結果、兄弟姉妹の配偶者に特別寄与料の請求が認められる場合には寄与行為に見合った額を支払うといいと思われます。

遺産分割協議書の作成

 話し合いの結果相続人の間で合意がなされた場合、遺産分割協議書を作成し相続人全員が署名・押印をしましょう。文章をしっかり残すことで「言った・言っていない」でトラブルになる可能性を防ぐことができます。

遺産分割調停

兄弟姉妹の配偶者が遺産分割協議に口出しすることで話し合いが進まなくなってしまった場合は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることが考えられます。第三者を交えることで相続人同士も冷静に話し合うことができ、兄弟姉妹の配偶者の介入を防ぐことができます。

 まとめ

兄弟姉妹の配偶者が相続分を要求してきた場合、彼らに法的な相続権はありませんが、特別寄与料や特別縁故者としての請求が認められることがあります。
まずは、相続人を確定し、配偶者が相続人でないことを明確に伝えることが重要です。
寄与分が主張された場合は、適切な調査を行い、必要に応じて相応の額を支払うことで解決を図りましょう。
話し合いが難航する場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることも有効です。

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著者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
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