株の相続手続き完全ガイド 名義変更から相続税申告まで
株の相続手続きは、証券会社への連絡から名義変更まで4ステップで完了できますが、評価方法や申告期限を誤ると延滞税・加算税が発生するリスクがあります。相続が発生したら早めに手続きの全体像を把握しておくことが重要です。

◆ この記事でわかること

  1. 株の相続手続きの4ステップと各段階でやるべきこと
  2. 上場株式・非上場株式の評価方法と相続税計算の基礎知識
  3. 名義変更に必要な書類と証券会社への申請方法・注意点

目次

株の相続手続きはどのような流れで進めればよい?

株の相続手続きは大きく4つのステップに分かれます。全体の流れを把握してから進めることで、書類の抜け漏れや期限切れを防ぐことができます。

ステップ内容目安期間
STEP 1相続人の確認・遺言書の確認相続発生後すぐ
STEP 2株式の財産調査と評価額の算定1〜2ヶ月以内
STEP 3遺産分割協議・協議書の作成2〜6ヶ月以内
STEP 4証券会社への名義変更手続き協議成立後

相続税の申告期限は相続発生から10ヶ月以内のため、早期に手続きを開始することが重要です。

STEP1:相続人の確認と遺言書の有無を確認する

最初にすべきことは、「誰が相続人なのか」を明確にすること、そして「遺言書があるかどうか」を確認することです。

法定相続人の範囲を確認する

法定相続人とは、民法で定められた相続を受ける権利がある人のことです。配偶者は常に相続人となり、子・親・兄弟姉妹の順に相続権が発生します。相続人を特定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式が必要です。

遺言書の有無と内容を確認する

遺言書がある場合、その内容が遺産分割の原則となります。公正証書遺言は公証役場で、自筆証書遺言は法務局や家庭裁判所で確認できます。遺言書の内容次第で、後述するSTEP 3の遺産分割協議が不要になるケースもあります。

【注意】

遺言書を勝手に開封すると「5万円以下の過料」が科される場合があります。家庭裁判所での「検認」が必要なので、自筆証書遺言が見つかった場合は必ず専門家に相談してください。

実際の相談事例(匿名)

【ご相談内容】

父が急逝し、遺品整理をしていたところ複数の証券会社からの書類が見つかりました。株の相続手続きは初めてで、どこに何株あるのかも把握できておらず、何から手をつければよいか途方に暮れてご相談にいらっしゃいました。相続人は母・兄・私の3名でしたが、兄は遠方に住んでおり、協議をどう進めるか不安を感じていました。

【対応結果】

まず戸籍謄本一式を収集し、相続人3名を正式に確定。証券保管振替機構(ほふり)への照会も行い、父が保有していた全口座(3社)を特定しました。遺産分割協議書は当事務所で作成し、遠方の兄への郵送対応も一括でサポート。ご相談から約4ヶ月で全証券会社の名義変更が完了しました。「専門家に任せて本当によかった」とお喜びの声をいただきました。

STEP2:株式の財産調査と評価額の算定はどうする?

相続財産として株式がある場合、その種類と評価額を正確に把握することが相続税計算の前提となります。

被相続人が保有していた株式を調べる方法

証券会社から送られてくる取引報告書・残高証明書のほか、証券保管振替機構(ほふり)を通じた照会でも保有口座を確認できます。
保有株が不明な場合は、郵便物や通帳の配当金入金履歴も手がかりになります。

上場株式の評価方法

上場株式は市場で公開されているため、時価(市場価格)をもとに評価します。
具体的には以下の4つの価格のうち最も低い額を採用します。

評価基準内容
相続発生日の終値原則として最初に確認する価格
相続発生月の終値平均当月の取引日の終値の平均
相続発生前月の終値平均前月の取引日の終値の平均
相続発生前々月の終値平均前々月の取引日の終値の平均

これら4つのうち最も低い金額が上場株式の相続税評価額となります。

非上場株式の評価方法

同族会社など市場で取引されていない非上場株式は、上場株式と異なり客観的な時価がありません。
国税庁の財産評価基本通達に基づき、主に以下の3つの方式で評価します。

  • 類似業種比準方式:上場している類似業種の株価を参考に算定
  • 純資産価額方式:会社の純資産(資産-負債)をもとに算定
  • 配当還元方式:過去の配当実績をもとに算定(小数株主向け)

非上場株式の評価は専門知識が必要なため、税理士や司法書士への相談が推奨されます。

【専門家としての見解・アドバイス】

非上場株式の評価は、上場株式と異なり「正解が一目でわからない」点が最大の落とし穴です。類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式のどれを適用するかによって、評価額が数百万〜数千万円単位で変わることがあります。特に同族会社の株式を大量に保有しているケースでは、評価方式の選択を誤ると相続税が大幅に増加するリスクがあります。
また、相続人が株式の存在に気づかないまま申告期限を迎えてしまうケースも少なくありません。通帳の配当金入金履歴や郵便物など、早い段階で徹底的に財産調査を行うことが重要です。当事務所では戸籍収集と並行して財産調査のサポートも行っており、提携税理士と連携した評価方式の検討から申告まで一貫して対応しています。

STEP3:遺産分割協議の進め方と協議書の作成

相続人が複数いる場合、誰が株式を引き継ぐかを相続人全員で話し合う「遺産分割協議」が必要です。
この合意がなければ名義変更手続きには進めません。

遺産分割協議の基本ルール

協議は相続人全員の参加と合意が必要です。一人でも欠けた状態で成立した協議は無効となります。
遠方に住む相続人がいる場合も、郵送や電話・オンラインでの調整が可能ですが、最終的な署名・押印は全員が行う必要があります。

遺産分割協議書の作成と注意点

協議で合意した内容は「遺産分割協議書」に文書化します。
この書類は名義変更手続きに不可欠で、法的効力をもつ重要文書です。
記載すべき主な内容は以下のとおりです。

  • 被相続人の氏名・死亡年月日
  • 相続財産の具体的な内容(会社名・株数・証券口座情報)
  • 各相続人の取得内容と取得割合
  • 相続人全員の署名・実印・印鑑証明書

【注意】

協議書の内容に不備があると証券会社での手続きが受け付けられない場合があります。特に株式の記載は「会社名・株数・種別」まで正確に記入してください。

STEP 4:証券会社への名義変更手続きに必要な書類は?

遺産分割協議が成立したら、故人の株式を相続人の口座へ移管する「名義変更手続き」を行います。
手続きは故人が口座を持っていた証券会社ごとに個別に行う必要があります。

一般的に必要な書類

書類取得先・備考
被相続人の出生〜死亡の戸籍謄本(一式)市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本市区町村役場
遺産分割協議書(または遺言書)相続人が作成・公証役場
相続人全員の印鑑証明書市区町村役場
故人の株式残高証明書証券会社に請求
相続人名義の証券口座情報相続人が口座を開設済みであること

証券会社によって追加書類が求められることがあります。手続き開始前に各証券会社の相続窓口に確認することをお勧めします。

手続きの流れ(証券会社への申請)

STEP 1
証券会社に相続発生を連絡し、手続き案内を受け取る
STEP 2
必要書類を揃え、証券会社の相続専用窓口に提出
STEP 3
審査完了後、相続人の口座へ株式が移管される
STEP 4
残高証明書等で名義変更が完了したことを確認

完了まで証券会社によって2週間〜2ヶ月程度かかる場合があります。
相続税の申告期限(10ヶ月)を考慮して早めに着手してください。

相続税の申告はいつまでに行わなければならない?

相続税の申告はいつまでに行わなければならない?
株式を含む相続財産全体の評価額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要です。

申告期限と基礎控除額

相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算し、これを超える場合に申告が必要です。

法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円

【注意】

申告期限を過ぎると「延滞税」「無申告加算税」が発生します。相続財産に非上場株式がある場合は評価に時間がかかるため、早期に税理士へ相談することを強くお勧めします。

相続税の申告が不要な場合でも手続きは必要

相続税の申告が不要な場合でも、株式の名義変更手続きは必ず行ってください。名義変更をしないまま放置すると、配当金の受け取りができなくなるほか、将来の相続時に手続きが複雑化します。

相続した株を売却したときの税金(譲渡所得税)はどうなる?

名義変更が完了した後に株式を売却した場合、譲渡益(売却価格−取得費)に対して譲渡所得税がかかります。

取得費の考え方(相続した株の場合)

相続で取得した株式の「取得費」は、被相続人が取得した時の価格がそのまま引き継がれます。購入価格が不明な場合は、売却金額の5%を概算取得費として使用できますが、実際の購入価格より低くなる可能性があるため注意が必要です。

確定申告が必要なケース

  • 特定口座(源泉徴収あり):基本的に確定申告不要
  • 特定口座(源泉徴収なし)・一般口座:確定申告が必要
  • 他の所得と損益通算する場合:確定申告が必要

相続税を納付していた場合、一定の条件を満たせば売却時に「取得費加算の特例」を適用できます。
この特例は相続税申告書の提出が条件となるため、税理士に確認することをお勧めします。

株の相続手続きでよくある失敗・注意点は?

株の相続手続きでは、以下のようなトラブルが多く発生しています。

Q1. 相続する株式の口座を見つけられない場合はどうする?

複数の証券会社に口座を持っていた場合、すべての口座を把握できていないことがあります。
「証券保管振替機構(ほふり)」への照会や、郵便物・通帳の確認が有効です。
タンス株(紙の株券)が残っている場合は、法務局やJASDAC等を通じた手続きが別途必要です。

Q2. 配当金が被相続人の口座に入金され続けている場合は?

名義変更前に入金された配当金は「未受領配当金」として相続財産に含まれます。
証券会社や発行会社に連絡し、相続人への振替手続きを行う必要があります。
放置すると配当金の請求権が時効(5年)で消滅する可能性があります。

Q3. 相続人の間で株式の分け方が決まらない場合は?

遺産分割協議が長引く場合、故人の株式は相続人全員の共有状態が続きます。
共有状態のまま株式を売却するには相続人全員の同意が必要なため、早期の解決が望ましいです。
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の「遺産分割調停」を申し立てることもできます。

株の相続手続きを司法書士に依頼するメリットは?

株の相続手続きは複数の書類収集・複数の証券会社との連絡・遺産分割協議書の作成など、多岐にわたる作業が発生します。
司法書士は相続手続き全般をサポートする専門家です。

  • 相続人の調査・確定(戸籍収集代行)
  • 遺産分割協議書の作成
  • 証券会社への名義変更手続きの代行サポート
  • 相続放棄の申述書作成
  • 不動産の相続登記(2024年4月から義務化)

よくある質問

Q1. 株の相続手続きにかかる期間はどのくらい?

書類収集から名義変更完了まで、通常2〜6ヶ月程度かかります。相続人が多い・非上場株式がある・協議が長引くなどのケースでは1年以上になることもあります。相続税申告期限(10ヶ月)に間に合うよう早めに着手することを推奨します。

Q2. 相続した株はそのまま保有し続けることはできる?

はい、可能です。名義変更(移管手続き)を行ったうえで、相続した証券口座または相続人自身の口座で引き続き保有できます。ただし、名義変更が完了するまでは売却などの取引が制限される場合があります。

Q3. 証券会社が複数ある場合の手続きはどうなる?

各証券会社ごとに個別に手続きを進める必要があります。書類の準備は共通していますが、各社の手続き方法・提出先が異なるため、それぞれ確認してください。

Q4. 相続税がかからない場合でも申告は必要?

相続財産の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)以下であれば申告は不要です。
ただし、小規模宅地等の特例・配偶者控除などの特例を適用する場合は、たとえ税額がゼロでも申告書の提出が必要となります。

Q5. 非上場株式が多額になる場合はどうすれば?

非上場株式の評価は複雑で、評価方法の選択によって相続税額が大きく変わります。
また、株式の換金が難しいため「物納」「延納」も検討対象となる場合があります。
早期に税理士・司法書士へ相談することをお勧めします。

まとめ:株の相続手続きは早めの行動が重要

株の相続手続きを整理すると、以下のとおりです。

STEP 1
相続人の確認と遺言書の有無を確認
STEP 2
保有株式の調査と評価額の算定
STEP 3
遺産分割協議・協議書の作成(相続人全員の合意が必要)
STEP 4
証券会社への名義変更手続き

相続税の申告期限は10ヶ月以内のため、早期着手が欠かせません。書類の準備や証券会社との連絡など煩雑な手続きを確実に進めるためにも、早めに専門家へご相談ください。

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