相続放棄の対象となる古い空き家の外観

相続放棄をした空き家は、次の順位の相続人に引き継がれます。全員が放棄すると相続財産清算人が管理し、最終的には国のものになります。

ただし、放棄しただけで自動的に国が引き取るわけではありません。空き家に住んでいた人には、放棄後も管理の義務が残る場合があります。

◆ この記事でわかること

  1. 相続放棄した空き家が、誰に引き継がれ、最終的にどうなるのか
  2. 放棄後の管理義務・固定資産税・解体についての注意点
  3. 相続放棄のほかに空き家を手放す方法(国庫帰属制度・売却)との比べ方

※本記事は司法書士法人やなぎ総合法務事務所が監修しています。最終更新日:2026年10月

目次

相続放棄した空き家はどうなりますか?

相続放棄をすると、空き家は次の順位の相続人に引き継がれます。全員が放棄した場合は、家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が管理・処分し、残った財産は国庫に入ります。

STEP 1同じ順位のほかの相続人が引き継ぐ

兄弟3人のうち1人が放棄すれば、残る2人が空き家を相続します。

STEP 2次の順位の相続人に権利が移る

子が全員放棄すると親(直系尊属)へ、親もいなければ兄弟姉妹へ移ります。兄弟姉妹がすでに亡くなっていれば、その子である甥・姪が相続人になります。

STEP 3全員が放棄すると、相続人がいない状態になる

空き家は誰の名義にもならず、そのまま放置されることが少なくありません。

STEP 4相続財産清算人が選ばれ、管理・売却する

債権者や自治体などの申立てにより、家庭裁判所が清算人を選びます(民法952条)。

STEP 5売れ残った財産は国庫に帰属する

清算が終わって残った財産は、最終的に国のものになります(民法959条)。

【注意】

相続放棄をしても、空き家がすぐに国に引き取られるわけではありません。清算人が選ばれるまでの間、空き家は誰も管理しない状態になりがちです。

相続放棄の件数は増えている

家庭裁判所が受理した相続放棄は、2023年に28万2,785件となり、過去最多を更新しました(司法統計)。売れない実家を引き継ぎたくないという理由で、放棄を選ぶ人が増えています。

相続放棄しても、空き家の管理義務は残りますか?

空き家の戸締まりを確認する女性

放棄した時点で空き家を「現に占有」していた人だけに、保存義務が残ります(民法940条1項)。占有していなければ、原則として管理義務は負いません。

2023年4月の民法改正で、義務を負う人が限定された

改正前は、放棄した人が広く管理を続けなければならないと読める規定でした。2023年4月1日からは、対象が「放棄の時に現に占有している人」に限られています。

放棄後に保存義務を負うかどうかの目安です。

放棄した人の状況保存義務理由
親と実家で同居していた負う放棄時に空き家を現に占有している
実家の鍵を預かり、定期的に出入りしていた負う可能性がある事実上の管理をしているとみなされやすい
遠方に住み、実家に関わっていない原則負わない占有していない
放棄前に遺品整理のため実家に通っていた状況による滞在の期間や鍵の管理状況などで判断される

保存義務とは、何をしなければならない義務か

保存義務は、次の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ程度の注意で空き家を保つ義務です。雨漏りの応急処置や、戸締まりの確認などがこれにあたります。

空き家が傷んで近隣に被害が出ると、管理していた人がトラブルに巻き込まれることもあります。保存義務から外れるには、相続財産清算人の選任を申し立てて引き渡すのが確実です。

相続放棄した空き家の固定資産税は、誰が払いますか?

相続放棄が受理された人は、空き家の固定資産税を払う必要はありません。放棄すると、最初から相続人でなかったものとみなされるためです(民法939条)。

ただし、放棄した後もその家に住み続けていると、所有者がわからない場合に「使用者」として課税される可能性があります(地方税法343条5項)。

役所から納税の通知が届いたときの対応

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課税されます(地方税法343条・359条)。所有者が亡くなっていると、役所は戸籍から相続人を調べ、相続人代表者の届出や納税通知書を送ってきます。

この通知が届いたら、相続放棄申述受理通知書の写しを役所の資産税課へ提出してください。放棄の手続き中なら、その旨を伝えておきます。

相続した人は、放置すると税負担が増えることもある

空き家を相続した人が管理を怠ると、自治体から「管理不全空家」や「特定空家」に指定されることがあります。勧告を受けると、土地の固定資産税を最大6分の1に抑えている住宅用地の特例が外れます(空家等対策の推進に関する特別措置法)。

相続放棄の前に、空き家を解体・片付けしてもいいですか?

放棄を考えているなら、解体や売却はしてはいけません。相続財産を処分すると単純承認(借金も含めてすべて相続すること)とみなされ、放棄できなくなります(民法921条1号)。

放棄前にしてよいこと・避けるべきことを整理します。

行為放棄前にしてよいか補足
空き家の解体避ける処分にあたり、単純承認とみなされる
空き家や家財の売却避ける処分にあたる
価値のある家財の持ち出し・形見分け避ける高価な物は処分とみなされやすい
雨漏りの応急修理・戸締まりしてよい財産の価値を保つ保存行為にあたる
明らかなゴミの処分通常は問題ない経済的価値のない物に限る

解体費用の目安

空き家を相続してから解体する場合、木造2階建て30坪で100万〜200万円程度が一般的な目安です。立地や残置物の量によって大きく変わるため、2社以上から見積もりを取ってください。

専門家としての見解・アドバイス

これまで空き家が関わる相続放棄のご相談を受けてきた経験から申し上げると、最も多い失敗は「よかれと思って片付けた」ことです。親の家財を業者に依頼して一括処分し、その後で借金が見つかって放棄しようとしても、処分済みと判断されるおそれがあります。放棄を少しでも考えているなら、まず手を止めてご相談ください。

もう1つ見落とされがちなのが、親族への影響です。子が全員放棄すると、親の兄弟姉妹に相続権が移ります。兄弟姉妹が亡くなっていれば、甥・姪が相続人です。普段付き合いのない親族に突然、空き家と固定資産税の通知が届き、トラブルになるケースは珍しくありません。放棄をするなら、次に相続人になる方へ事前に知らせておくことをおすすめします。

当事務所では、財産調査で借金の有無を確認したうえで、放棄・相続して売却・国庫帰属制度のどれが合うかを比べてご提案しています。3ヶ月の期限が迫っている場合は、期間伸長の申立てから対応します。

相続人全員が放棄した空き家は、最終的にどうなりますか?

利害関係人の申立てで相続財産清算人が選ばれ、空き家を売却するなどして清算します。売れ残った財産は国庫に帰属します。

相続財産清算人の申立てには予納金がかかる

申立てができるのは、債権者・自治体・保存義務を負う元相続人などの利害関係人です。申立て時には、清算人の報酬や管理費用にあてる予納金を裁判所に納めます。

予納金は遺産の内容によって決まり、数十万円〜100万円程度が目安です。空き家に価値がなく、ほかに財産も少ないほど、予納金は高くなりやすい傾向があります。

清算が終わるまで1年以上かかることが多い

清算人は、相続人や債権者を探す公告をしたうえで、空き家の売却や債務の支払いを進めます。公告期間だけで6ヶ月以上かかるため、手続き全体では1年以上になるのが一般的です。

空き家を手放すなら、相続放棄以外の方法はありますか?

司法書士に実家の空き家の手放し方を相談する兄妹

相続したうえで売却する方法と、相続土地国庫帰属制度を使う方法があります。相続放棄は、空き家以外の財産も一切受け取れない点が大きな違いです。

空き家を手放す主な方法を比べます。

方法ほかの財産費用・条件向いているケース
相続放棄預貯金なども含め一切受け取れない3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述借金が多い、財産がほぼ空き家だけ
相続して売却受け取れる仲介手数料・譲渡所得税。空き家の特別控除(最大3,000万円)を使える場合がある買い手が見つかる立地
相続土地国庫帰属制度受け取れる建物の解体が必要。審査手数料1筆14,000円、負担金は原則20万円売れない土地を手放したい
相続して隣地所有者などに譲る受け取れる贈与や低額での売却。登記費用がかかる隣の人が土地を必要としている

相続土地国庫帰属制度は「建物を壊した土地」が対象

2023年4月27日に始まった制度で、相続した土地を国に引き取ってもらえます。ただし、建物が建っている土地は申請できません。空き家を解体して更地にする費用が、先にかかります。

担保権が付いている土地、境界に争いがある土地、土壌汚染がある土地なども対象外です。承認されると、10年分の管理費用にあたる負担金を納めます。

負動産を処分する方法は、相続する前に比べる

負動産(ふどうさん=持っているだけで費用がかかる不動産)は、相続を承認した後なら売却・譲渡・国庫帰属を選べます。相続放棄は、相続を知ってから3ヶ月以内にしか選べません。期限内に、すべての選択肢を比べることが大切です。

実家の空き家を相続放棄すべきか、どう判断すればいいですか?

借金が財産を上回るか、空き家以外に受け取りたい財産があるか、の2点で判断します。迷うなら、3ヶ月の期限を延ばす手続きも使えます。

  • 借金やローンが、預貯金と空き家の価値の合計を上回っている
  • 空き家以外に、預貯金や株式などのめぼしい財産がない
  • 空き家に住む予定も、売れる見込みもない
  • 次の順位の相続人(親の兄弟姉妹など)への影響を説明できる

当てはまる項目が多いほど、相続放棄が向いています。反対に、預貯金がまとまってあるなら、相続したうえで空き家だけを売却や国庫帰属で手放すほうが有利です。

期限は相続を知った時から3ヶ月以内

相続放棄は、自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述します(民法915条1項)。財産調査が間に合わないときは、期限内に期間伸長の申立てをすれば延ばせる場合があります。

当事務所にご依頼いただく場合の報酬の目安です(税別・実費別)。

手続き報酬の目安
相続放棄(相続開始から3ヶ月以内)98,000円
相続放棄(相続開始から3ヶ月経過後)150,000円
相続放棄の期間伸長の申立て50,000円
相続財産調査(財産目録作成・調査対象2社まで)50,000円〜

ご相談事例|60代女性・空き家になった実家を兄妹で相続放棄し、叔父にも事前に説明したケース

【ご相談内容】

兵庫県内で1人暮らしをしていた母が亡くなり、築52年の実家が空き家になりました。相続人は60代の兄と妹の2人で、どちらも大阪市内に住んでいます。不動産会社の査定は「建物の解体費を差し引くと値段がつかない」というもの。母には消費者金融からの借入れが約180万円あり、預貯金は約40万円でした。

【対応結果】

財産調査で借入れの全体を確認し、兄妹2人とも相続放棄を選択。どちらも実家に住んでおらず、鍵の管理もしていなかったため、保存義務は負わない状況でした。次に相続人となる母の弟には、放棄の前に事情を説明する手紙を当事務所から送付しています。ご相談から約1ヶ月半で、2人とも放棄の申述が受理されました。

相続放棄と空き家に関するよくある質問

Q1. 相続放棄をすれば、空き家の管理から完全に解放されますか?

放棄の時に空き家を占有していなければ、原則として管理義務はありません。同居していたなど占有していた場合は、次の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ります(民法940条1項)。

Q2. 空き家だけを相続放棄して、預貯金は受け取れますか?

できません。相続放棄は、すべての財産と借金をまとめて放棄する手続きです。空き家だけを手放したいなら、相続したうえで売却や相続土地国庫帰属制度を検討してください。

Q3. 相続放棄した空き家が倒壊したら、責任を問われますか?

放棄の時に空き家を占有していなかった人が、責任を問われることは通常ありません。占有していて保存義務を負う人は、管理を怠ると次の相続人などから責任を問われる可能性があります。不安があれば、相続財産清算人の選任を早めに検討してください。

Q4. 相続放棄した後も、固定資産税の通知が届きます。払う必要はありますか?

払う必要はありません。役所の資産税課に、相続放棄申述受理通知書の写しを提出して放棄したことを伝えてください。通知は、役所が放棄の事実を把握していないために届いています。

Q5. 相続放棄をすると、親戚に迷惑がかかりますか?

次の順位の相続人に権利が移るため、事前に知らせないとトラブルになることがあります。子が全員放棄すると親へ、親がいなければ兄弟姉妹へ移ります。兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥・姪が代わりに相続人になります。

Q6. 空き家の中の家財は、放棄前に処分してもいいですか?

価値のある家財の処分や持ち出しは避けてください。単純承認とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。明らかなゴミの処分や、雨漏りの応急処置などの保存行為は問題ないとされています。

Q7. 相続放棄の手続きは自分でもできますか?

できます。家庭裁判所に申述書と戸籍謄本などを提出し、照会書に回答します。ただし期限が迫っている場合や、借金の全体がわからない場合は、財産調査とあわせて専門家に依頼すると確実です。

まとめ|空き家の相続放棄は「放棄後の行方」まで見て判断する

この記事のポイントをまとめます。

  • 相続放棄した空き家は次の順位の相続人へ移り、全員が放棄すると清算人を経て国庫に入る
  • 放棄後に保存義務を負うのは、放棄の時に空き家を現に占有していた人だけ
  • 相続放棄が受理されれば、固定資産税を払う必要はない
  • 放棄前に解体や家財の処分をすると、単純承認とみなされ放棄できなくなる
  • 預貯金などを受け取りたいなら、相続して売却・国庫帰属制度を使う方法も比べる

空き家の相続放棄は、手続きそのものより「放棄した後に空き家と親族がどうなるか」を見通すことが大切です。期限の3ヶ月は、財産調査をしているとあっという間に過ぎてしまいます。

司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、財産調査から相続放棄の申述書作成、期間伸長の申立てまで対応しています。空き家を相続するか放棄するかで迷っている段階でも、まずは無料相談をご利用ください。

電話相談

 

相続サイト
所在地
  • 大阪市阿倍野区阿倍野筋三丁目10番1号 あべのベルタ 3009号
  • 東京都渋谷区東3-6-18 プライムハウス 203号
その他
    • 受付時間 9:00 ~ 20:00
    • 土日祝日:10:00~18:00
    • 電話予約により時間外対応可能

著者情報

代表 柳本 良太

お問い合わせ

 

    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
司法書士法人やなぎ総合法務事務所運営の相続・家族信託相談所