亡くなった家族の株式の相続手続きを確認する母と息子

遺産相続で株式を引き継ぐ手続きは、証券会社への連絡、口座と株式の特定、遺産分割、相続人口座への移管の順で進めます。

移管が終わるまで株式は売れないため、株価が動く前に早めに着手することが大切です。

◆ この記事でわかること

  1. 株式の相続手続きの全体の流れと、各ステップにかかる期間
  2. 遺言の有無で変わる必要書類と、故人の証券口座の探し方
  3. 株式の分け方・特定口座やNISAの扱い・非上場株式の注意点

※本記事は司法書士法人やなぎ総合法務事務所が監修しています。最終更新日:2026年10月

目次

遺産相続で株式の手続きはどんな流れで進めますか?

証券会社の窓口で株式の相続手続きの説明を受ける女性

株式の相続手続きは、次の6つのステップで進みます。上場株式なら、相続発生から名義変更(移管)完了まで3〜6ヶ月程度が目安です。

STEP 1証券会社に死亡を連絡する

連絡を受けた時点で故人の口座は凍結され、売買や出金ができなくなります。相続手続きの案内書類が送られてきます。

STEP 2口座と保有株式を特定する

郵便物や通帳の配当金入金を手がかりに、取引していた証券会社を洗い出します。見つからない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求をします。

STEP 3残高証明書を取得する

相続開始日(死亡日)時点の残高証明書を、証券会社ごとに請求します。相続税の申告や遺産分割の資料になります。

STEP 4相続人を確定し、遺言書を確認する

故人の出生から死亡までの戸籍を集めて相続人を確定します。遺言書があれば、原則としてその内容に従って手続きします。

STEP 5遺産分割協議で取得者を決める

遺言書がない場合は、相続人全員で誰がどの株式を何株受け取るかを決め、遺産分割協議書を作ります。

STEP 6相続人の口座へ移管する

受け取る相続人が同じ証券会社に口座を開設し、必要書類を提出します。書類提出から移管完了までは2週間〜1ヶ月程度が一般的です。

【注意】

移管が完了するまで、株式は売却できません。株価が大きく下がっても動かせないため、手続きは早めに始めてください。

株式の相続手続きに必要な書類は何ですか?

必要書類は、遺言書があるか、遺産分割協議で決めたかによって変わります。共通して必要なのは、証券会社所定の相続手続依頼書と戸籍謄本です。

一般的な必要書類をケース別に整理します(証券会社により異なります)。

書類遺言書あり遺産分割協議取得先
相続手続依頼書○○証券会社
故人の出生〜死亡の戸籍謄本△(死亡の記載があるもの)○市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本受け取る人のみ○市区町村役場
遺言書(検認済証明書付き)○−公正証書・法務局保管なら検認不要
遺産分割協議書−○(全員の実印)相続人が作成
印鑑証明書受け取る人(遺言執行者)相続人全員市区町村役場
受け取る人の口座情報○○移管先の証券会社

戸籍謄本の束の代わりに、法務局で発行される法定相続情報一覧図の写し(相続関係を1枚にまとめた証明書)を使える証券会社がほとんどです。複数の証券会社や銀行に手続きするなら、先に取得しておくと手間が減ります。

印鑑証明書の有効期限に注意

証券会社の多くは、発行から6ヶ月以内の印鑑証明書を求めます。遺産分割協議が長引くと期限が切れ、取り直しになることがあります。

故人の証券口座がわからないときは、どう探しますか?

証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」をすれば、故人が口座を持っていた証券会社の一覧がわかります。

ほふりへの開示請求でわかること・わからないこと

開示されるのは、口座を開設していた証券会社・信託銀行の名称です。銘柄や株数はわからないため、判明した各社に残高証明書を請求します。開示請求には所定の手数料がかかり、結果が届くまで2〜3週間ほどかかります。

単元未満株・特別口座は信託銀行で手続きする

証券会社の口座に入っていない株式もあります。株式の配当や株主優待の通知だけが届いている場合は、特別口座(株券電子化の際に作られた口座)で管理されている可能性があります。

特別口座の株式は、通知に書かれた株主名簿管理人(三井住友信託銀行・三菱UFJ信託銀行など)で相続手続きをします。

紙の株券が出てきた場合

上場会社の株券は、2009年1月の株券電子化で無効になっています。ただし株主としての権利は、特別口座で管理されています。株券に記載された会社名から株主名簿管理人を調べ、問い合わせてください。

相続した株式はどうやって分けますか?

相続した株式の分け方を話し合う家族

株式の分け方は、株数で分ける現物分割、売って現金で分ける換価分割、1人が取得してほかの相続人へお金を払う代償分割の3つが中心です。

それぞれの分け方の特徴を比べます。

分け方内容向いているケース注意点
現物分割株数で分ける(例:A社株600株を300株ずつ)保有を続けたい人が複数いる単元(100株)未満に割ると売りにくい
換価分割移管後に売却し、代金を分ける誰も保有を望まない売却益に譲渡所得税がかかる
代償分割1人が取得し、他の人へ代償金を払う銘柄をまとめて引き継ぎたい取得する人に資金が必要
共有全員の共有のまま保有する協議がまとまらない議決権の行使や売却に全員の調整が必要

相続人の間で株式を準共有(共有の株式版)にすると、議決権などを行使する代表者を1人決めて会社に通知する必要があります(会社法106条)。手間が増えるため、できるだけ株数で分けるか、1人に集めるほうが後々スムーズです。

遺産分割協議書の書き方のポイント

協議書には、証券会社名・支店名・口座番号・銘柄名・株数を正確に書きます。「○○証券の口座内の株式すべて」とまとめて書く方法もありますが、証券会社によっては銘柄ごとの記載を求められます。

株式の相続手続きに期限はありますか?

株式の名義変更そのものに法律上の期限はありません。ただし、相続放棄・準確定申告・相続税申告には期限があり、株式の手続きもこれに合わせて進める必要があります。

株式の相続で意識したい期限を整理します。

手続き期限株式との関係
相続放棄・限定承認相続を知った時から3ヶ月以内(民法915条)株式を売ると単純承認とみなされ、放棄できなくなる
準確定申告相続を知った日の翌日から4ヶ月以内故人が受け取った配当金などを申告する
相続税の申告・納付相続を知った日の翌日から10ヶ月以内株式の評価額を含めて申告する
相続登記(不動産がある場合)取得を知った日から3年以内協議書を株式と共通で作ると効率的

相続税の計算で使う上場株式の評価額

上場株式は、次の4つの価格のうち最も低い金額で評価します。死亡日の終値、死亡した月の終値の月平均、前月の月平均、前々月の月平均です。株価が下がっている時期なら、月平均を使うことで評価額を抑えられます。

特定口座やNISAの株式は、相続でどう扱われますか?

特定口座の株式は相続人の特定口座へ移せますが、NISA口座の株式は相続人のNISA口座へは移せません。

口座の種類ごとの扱いを比べます。

口座の種類移管先取得価額の扱い
特定口座相続人の特定口座(または一般口座)故人の取得価額を引き継ぐ
一般口座相続人の一般口座(または特定口座)故人の取得価額を引き継ぐ
NISA口座相続人の特定口座または一般口座死亡日の時価が取得価額になる

故人の取得価額がわからないと、売却時に「売却額の5%」を取得費とする概算で計算することになります。値上がり益がそのまま課税されやすいため、故人の取引報告書は捨てずに保管しておきましょう。

株式の相続手続きでよくある失敗と注意点は?

多い失敗は、株式の見落とし、移管前の値下がり、相続放棄の検討中に株式を売ってしまうことの3つです。

相続放棄を考えているなら、株式に手を付けない

相続財産を処分すると、単純承認(借金も含めてすべて相続すること)をしたとみなされます(民法921条1号)。借金が多い可能性があるなら、株式の売却や名義変更は放棄の判断がつくまで止めてください。

非上場株式は会社への手続きが別に必要

同族会社などの非上場株式は、証券会社ではなく発行会社で株主名簿の書き換えをします。定款に定めがあれば、会社が相続人に株式の売渡しを請求できる点にも注意が必要です(会社法174条)。

非上場株式の相続税評価は、類似業種比準方式や純資産価額方式などで計算し、方式によって評価額が大きく変わります。評価は税理士の領域のため、早めに相談してください。

専門家としての見解・アドバイス

これまで株式を含む相続を数多くお手伝いしてきた経験から申し上げると、最も多いつまずきは「見つかっていない株式」です。ネット証券は郵便物がほとんど届かず、ご家族が口座の存在を知らないまま遺産分割協議を終えてしまうことがあります。後から株式が出てくると、協議書の作り直しや相続税の修正申告が必要になります。

もう1つの落とし穴は、手続き中の株価の下落です。遺産分割協議に3ヶ月、移管に1ヶ月かかれば、その間は売りたくても売れません。保有を続けたくない株式が多いなら、協議の段階で「移管後すぐに売却して代金を分ける」と決めておくと、合意がスムーズです。

当事務所では、戸籍収集とあわせて、ほふりへの開示請求から各社への残高証明書の請求まで一括で進めています。相続税の申告が必要な場合は提携税理士と連携し、株式の評価額を共有したうえで遺産分割協議書を作成しています。

株式の相続手続きは司法書士に依頼できますか?

はい、依頼できます。司法書士は、戸籍の収集から証券口座の調査、遺産分割協議書の作成、証券会社への手続きまで代行できます。

当事務所にご依頼いただく場合の報酬の目安です(税別・実費別)。

サポート内容報酬の目安
相続人調査(戸籍収集・推定相続人4名まで)45,000円〜
相続財産調査(財産目録作成・調査対象2社まで)50,000円〜
遺産分割協議書作成(不動産・金融機関名義変更用)50,000円〜
相続手続き丸ごとサービス(遺産整理業務)300,000円〜(遺産額により変動)

証券会社が3社以上ある、相続人が遠方に住んでいる、不動産の相続登記もある――このような場合は、まとめて依頼すると手続きの重複がなくなります。

ご相談事例|60代女性・ネット証券を含む3社の株式を、2ヶ月半で移管できたケース

【ご相談内容】

70代の夫が急逝し、相続人は妻と長男・長女の3人。自宅で見つかったのは1社分の取引報告書だけでした。夫がネット証券も使っていたらしいものの、口座の有無がわからない状態でのご相談です。

【対応結果】

戸籍収集と並行して、ほふりに開示請求を行ったところ、ネット証券2社を含む計3社の口座が判明しました。保有株式は12銘柄、評価額は約2,300万円です。妻が長期保有したい4銘柄を、長男・長女が残り8銘柄を移管後に売却する内容で遺産分割協議書を作成しました。ご相談から約2ヶ月半で、3社すべての移管が完了しています。

株式の相続手続きに関するよくある質問

Q1. 株式の相続手続きには、どれくらいの期間がかかりますか?

上場株式なら、相続発生から移管完了まで3〜6ヶ月程度が目安です。証券会社が複数ある場合や、遺産分割協議が長引く場合は、1年近くかかることもあります。

Q2. 故人の口座のまま株式を売却できますか?

できません。死亡の連絡を受けると口座は凍結されます。売却するには、相続人の口座へ移管してから相続人が売る必要があります。

Q3. 相続した株式の配当金はどうなりますか?

死亡前に支払いが確定していた未受領の配当金は、相続財産になります。死亡後から遺産分割までの配当金は、法律上は各相続人が法定相続分で取得すると考えられています。実務では、株式を取得した人がまとめて受け取ると協議書に定めておくのが一般的です。

Q4. 株式を相続したら、相続人も証券口座を開く必要がありますか?

はい、株式を受け取る相続人は、故人と同じ証券会社に口座を開設する必要があります。ほかの証券会社へ移したい場合も、いったん同じ会社で移管を受けてから振り替える流れが一般的です。

Q5. 相続した株式を売ると、税金はかかりますか?

売却益に対して約20%の譲渡所得税・住民税がかかります。取得費は故人の購入価格を引き継ぎます。相続税を納めていれば、相続開始から3年10ヶ月以内の売却で取得費加算の特例を使える場合があります。

Q6. 株式の相続手続きを放置するとどうなりますか?

株価の変動に対応できず、配当金も受け取れない状態が続きます。さらに次の相続が起きると、相続人が増えて手続きが複雑になります。名義変更に期限はなくても、早めの着手をおすすめします。

Q7. 株式の相続で、司法書士と税理士はどう使い分けますか?

戸籍収集・口座調査・遺産分割協議書の作成・名義変更の手続きは司法書士、株式の評価と相続税の申告は税理士の担当です。当事務所では、両方が必要な案件を提携税理士と連携して進めています。

まとめ|株式の相続は「口座の特定」と「早めの移管」がカギ

この記事のポイントをまとめます。

  • 株式の相続は、死亡連絡→口座の特定→残高証明→相続人の確定→遺産分割→移管の6ステップ
  • 口座がわからないときは、ほふりへの開示請求で証券会社の一覧がわかる
  • 移管が終わるまで株式は売れないため、株価の変動リスクを考えて早めに着手する
  • NISA口座の株式は相続人のNISAへ移せず、死亡日の時価が取得価額になる
  • 相続放棄を考えているなら、株式の売却や名義変更をしてはいけない

株式の相続は、証券会社ごとに書類や手順が異なり、見落としも起こりやすい手続きです。口座の調査から遺産分割協議書の作成まで、順番を間違えずに進めることが、時間と税金の両方を抑える近道になります。

司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、証券口座の調査から遺産分割協議書の作成、各社への手続きまで一貫してお手伝いしています。株式の評価や相続税の申告が必要な場合は、提携税理士と連携して対応します。まずは無料相談をご利用ください。

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著者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
司法書士法人やなぎ総合法務事務所運営の相続・家族信託相談所