孫との養子縁組と相続について家族で話し合う様子

孫と養子縁組をすると、孫は子と同じ第1順位の相続人になり、実子と同じ割合の相続分を持ちます。

一方で、相続税は2割加算の対象になり、ほかの子どもの取り分も減ります。縁組の前に、税金と家族への影響を数字で確かめることが大切です。

◆ この記事でわかること

  1. 孫養子の相続順位・相続分と、ほかの子どもの取り分への影響
  2. 相続税の2割加算・養子の人数制限など、税金面のプラスとマイナス
  3. 前妻の子・再婚相手の連れ子・縁組していない孫など、ケース別の扱い

※本記事は司法書士法人やなぎ総合法務事務所が監修しています。最終更新日:2026年10月

目次

孫と養子縁組すると、相続はどうなりますか?

司法書士から孫養子の相続について説明を受ける祖父母と孫

孫養子は、子と同じ第1順位の法定相続人になります(民法809条・887条1項)。孫の親が健在でも、孫は相続人として遺産を受け取れます。

孫は本来、相続人ではない

通常、孫が相続人になるのは代襲相続(だいしゅうそうぞく=亡くなった親の代わりに相続する仕組み)の場合だけです。孫の親が、祖父母より先に亡くなっているときに限られます。

養子縁組をすると、この前提が変わります。孫は祖父母の「子」になるため、親が健在でも相続人に加わるのです。

孫養子の法定相続分は実子と同じ

遺産6,000万円、相続人が配偶者・長男・長女のケースで、孫(長男の子)を養子にした場合と比べます。

立場養子縁組なし孫と養子縁組あり
配偶者3,000万円(1/2)3,000万円(1/2)
長男1,500万円(1/4)1,000万円(1/6)
長女1,500万円(1/4)1,000万円(1/6)
孫(長男の子)0円1,000万円(1/6)

長男家族の合計は1,500万円から2,000万円に増えます。反対に、長女の取り分は500万円減ります。この差が、きょうだい間の不満につながりやすいポイントです。

孫が「養子」と「代襲相続人」の二重の立場になるケース

孫養子の親が祖父母より先に亡くなっていると、孫は2つの立場を持ちます。「養子としての相続分」と「代襲相続人としての相続分」です。

戸籍実務の先例では、2つの相続分をあわせて取得できる扱いとされています。一方、相続税の基礎控除を計算するときは、相続人の数を「1人」と数えます(相続税法基本通達15-4)。

孫養子にすると相続税は増えますか?減りますか?

税理士から相続税の試算について説明を受ける高齢の夫婦

孫養子本人の相続税は2割増しになりますが、基礎控除が増えるため、家族全体では税額が下がるケースもあります。

孫養子は相続税額が2割加算される(相続税法18条)

配偶者と1親等の血族(子・父母)以外が財産を取得すると、相続税額に20%が加算されます。孫養子は民法上は「子」ですが、税法上はこの加算の対象です(相続税法18条2項)。

たとえば孫養子の相続税額が400万円なら、2割加算後は480万円になります。ただし、孫が代襲相続人を兼ねている場合は加算されません。

相続人の数に入れられる養子は1人または2人まで

基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の計算で数えられる養子には、上限があります(相続税法15条2項)。

  • 被相続人に実子がいる場合:養子は1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合:養子は2人まで

実子がいる方が孫2人を養子にしても、基礎控除が増えるのは1人分の600万円だけです。なお、この上限は税金の計算上のルールで、相続権は養子全員に認められます。

孫を養子にしたときの、税金面のプラスとマイナスを整理します。

項目孫養子にするとどうなるか影響
基礎控除600万円増える(養子1人分)プラス
生命保険金・死亡退職金の非課税枠それぞれ500万円増えるプラス
相続税率1人あたりの取得額が減り、低い税率区分になる場合があるプラス
相続税の課税回数子を経由せず孫へ渡るため、1世代分の課税を飛ばせるプラス
相続税額の2割加算孫養子の税額が20%増えるマイナス

プラスとマイナスのどちらが大きいかは、遺産額と家族構成で変わります。縁組の前に、税理士による「縁組あり・なし」の試算を取ることをおすすめします。

節税だけが目的の縁組は、税務上否認されることがある

相続税の負担を不当に減らす目的の縁組は、税務署が相続人の数に含めない扱いにできます(相続税法63条)。亡くなる直前、入院中に急いで縁組したケースが典型です。否認されても、民法上の養子の地位はそのまま残ります。

孫を養子にすると、どんなトラブルが起きやすいですか?

最も多いのは、ほかの子どもの取り分が減ることによる遺産分割の対立です。縁組を知らされていなかった相続人ほど、強く反発する傾向があります。

おじ・おばにあたる実子の相続分が減る

先ほどの例では、長女の相続分は1/4から1/6に減りました。長女から見ると、兄の家族だけが2人分を受け取る形になります。

遺留分侵害額請求を受ける可能性がある

遺留分(いりゅうぶん=法律で保障された最低限の取り分)は、孫養子にもほかの子にもあります。遺言で孫養子に多く渡すと、ほかの子から不足分をお金で請求されることがあります。

請求できる期間は、相続の開始と遺留分の侵害を知った時から1年以内です(民法1048条)。

未成年の孫養子には、後見人や特別代理人が必要になる

養親である祖父母が2人とも亡くなると、親権は実の親に自動では戻りません。家庭裁判所で未成年後見人を選ぶ必要があります。

祖父母の一方が存命で、未成年の孫と一緒に相続人になる場合は、遺産分割協議のために特別代理人の選任が必要です(民法826条)。

孫養子が先に亡くなっても、ひ孫は代襲相続できる

孫養子が祖父母より先に亡くなった場合、その子(ひ孫)は代わりに相続できます。ひ孫は縁組の前後を問わず、祖父母と血のつながった直系卑属だからです。

なお、他人を養子にした場合は扱いが異なります。縁組前に生まれた養子の子は、養親と親族関係がないため代襲相続できません(民法887条2項ただし書)。

専門家としての見解・アドバイス

これまで孫養子が関わる相続を担当してきた経験から申し上げると、もめる原因は税金よりも「知らされていなかったこと」です。おじ・おばが、祖父母の死亡後に戸籍を集めて初めて縁組を知る。この瞬間に、家族の信頼関係が大きく崩れます。

縁組をするなら、家族への説明と遺言書の作成をセットで進めてください。遺言書には「なぜ孫を養子にしたのか」を付言事項(法的効力はないが想いを伝える一文)として残すと、受け止め方が変わります。

当事務所では、縁組の前に相続人ごとの取り分と遺留分を一覧にしてお見せしています。相続税の試算が必要な場合は提携税理士と連携し、節税額と家族への影響を並べて比べたうえで判断していただいています。

前妻の子や再婚相手の連れ子は、養子縁組で相続がどう変わりますか?

前妻の子は養子縁組をしなくても相続人です。一方、再婚相手の連れ子は、養子縁組をしない限り相続人になりません。

家族の立場ごとに、相続権の有無を整理します。

立場養子縁組なし養子縁組あり
前妻(前夫)との間の子相続人(実子)縁組は不要
再婚相手の連れ子相続人ではない相続人(実子と同じ相続分)
孫親が先に亡くなった場合のみ相続人親が健在でも相続人
子の配偶者(嫁・婿)相続人ではない相続人
内縁の妻・夫相続人ではない婚姻届の提出が必要

前妻の子が、前妻の再婚相手と養子縁組していた場合

前妻の子が前妻の再婚相手と普通養子縁組をしていても、実父との親子関係は続きます。実父が亡くなれば、前妻の子は相続人です。

例外は特別養子縁組(実親との関係を終わらせる縁組)です。この場合は実親との親子関係がなくなり、相続権も失います(民法817条の9)。

「婿養子」は、妻の親と養子縁組しているかを確認する

婿養子と呼ばれていても、妻の親と養子縁組をしていなければ相続人ではありません。結婚して妻の姓を名乗るだけでは、親子関係は生じないためです。縁組の有無は、戸籍の身分事項欄で確認できます。

養子縁組していない孫に財産を残すにはどうすればいいですか?

養子縁組をしなくても、遺言書・生前贈与・生命保険の3つの方法で孫に財産を残せます。

遺言書で孫に遺贈する

遺言書に「孫○○に預金500万円を遺贈する」と書けば、相続人でない孫にも財産を渡せます。公正証書遺言(公証役場で作成する遺言)なら、家庭裁判所の検認手続きも不要です。なお、遺贈で取得した孫も相続税の2割加算の対象になります。

生前贈与で少しずつ渡す

贈与税には年110万円の基礎控除があります。2024年1月以降の贈与は、亡くなる前7年以内の分が相続財産に加算されます(2031年までは段階的に適用)。加算されるのは相続や遺贈で財産を受け取った人の分のため、何も受け取らない孫への贈与は対象外です。

生命保険の受取人を孫にする

死亡保険金は受取人固有の財産で、遺産分割の対象になりません。ただし、相続人でない孫には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使えない点に注意が必要です。

【注意】

孫が生命保険金や遺贈を受け取ると、税法上は遺贈で財産を取得した人として扱われます。亡くなる前7年以内の生前贈与が加算の対象になり、相続税の2割加算もかかります。

孫との養子縁組から相続までの手続きはどう進めますか?

養子縁組は市区町村役場への届出で成立します。相続が始まったら、戸籍で縁組を確認したうえで遺産分割協議を行います。

STEP 1家族で目的と影響を共有する

誰の相続分がどれだけ変わるかを数字で示し、子ども全員の理解を得ます。

STEP 2養子縁組届を提出する

養親か養子の本籍地、または所在地の市区町村役場へ提出します。成人の証人2人の署名が必要で、手数料はかかりません。

孫は祖父母の直系卑属のため、未成年でも家庭裁判所の許可は不要です(民法798条ただし書)。15歳未満なら、実の親が代わりに承諾します(民法797条)。

祖父母に配偶者がいる場合、未成年の孫とは夫婦そろって縁組する必要があります(民法795条)。

STEP 3遺言書を作成する

縁組とあわせて、誰に何を残すかを公正証書遺言で決めておきます。

STEP 4相続発生後、戸籍で相続人を確定する

被相続人の出生から死亡までの戸籍を集め、縁組の日付と相続人を確定します。

STEP 5遺産分割協議と相続登記を行う

孫養子を含む相続人全員で協議します。不動産を取得したら、3年以内に相続登記を申請しなければなりません(2024年4月から義務化)。

当事務所にご依頼いただく場合の報酬の目安です(税別・実費別)。

手続き報酬の目安
遺言書作成(財産2,000万円未満)98,000円〜
相続人調査(戸籍収集・推定相続人4名まで)45,000円〜
遺産分割協議書作成(不動産登記用)55,000円〜
相続登記スタンダードプラン(相続人が配偶者・子)98,000円

ご相談事例|70代女性・夫が孫を養子にしており、長女が協議に応じなかったケース

【ご相談内容】

夫(78歳)が亡くなり、相続人は妻・長男・長女・孫養子(長男の子、22歳)の4人。遺産は自宅(評価額2,400万円)と預貯金1,800万円でした。長女は縁組を知らされておらず、「兄の家だけ2人分もらうのは不公平」と、遺産分割協議に応じない状態でした。

【対応結果】

法定相続分と遺留分を一覧にし、孫養子の取得額を法定相続分より抑える代わりに、長女へ預貯金を厚めに配分する案をご提示しました。長女の遺留分を下回らない内容で、全員が合意しています。ご相談から約2ヶ月で遺産分割協議書を作成し、自宅の相続登記も完了しました。

孫との養子縁組と相続に関するよくある質問

Q1. 孫を養子にすると、孫の親(長男など)の相続分はどうなりますか?

孫の親の相続分は減りますが、親子の合計では取り分が増えます。相続人が1人増えるため、子1人あたりの割合が下がる仕組みです。その分、ほかの子どもの相続分も同じように減ります。

Q2. 孫養子にも遺留分はありますか?

はい、ほかの子どもと同じ割合の遺留分があります。子の遺留分は、法定相続分の2分の1です。遺言で孫養子の取り分を極端に少なくすると、孫養子から請求を受けることがあります。

Q3. 祖父母が亡くなった後に、孫と養子縁組できますか?

できません。養子縁組は、養親と養子の両方が生きている間に届け出る必要があります。なお、養親の死亡後に縁組を解消する死後離縁は、家庭裁判所の許可を得て行えます(民法811条6項)。ただし、すでに発生した相続には影響しません。

Q4. 孫養子が先に亡くなった場合、孫養子の子は相続できますか?

代襲相続できます。孫養子の子(ひ孫)は、縁組の前後を問わず祖父母の直系卑属だからです。他人を養子にした場合は、縁組前に生まれた養子の子は代襲相続できない点が異なります(民法887条2項ただし書)。

Q5. 孫は何人まで養子にできますか?

民法上、養子の人数に制限はありません。ただし相続税の基礎控除で数えられる養子は、実子がいれば1人、いなければ2人までです。人数を増やしても節税効果は増えません。

Q6. 孫養子が相続放棄をすると、相続税の基礎控除は減りますか?

減りません。基礎控除の計算では、相続放棄がなかったものとして相続人の数を数えます(相続税法15条2項)。ただし、放棄した孫養子は遺産を一切受け取れなくなります。

Q7. 孫との養子縁組の相談は司法書士にできますか?

はい、ご相談いただけます。縁組前の相続分・遺留分の試算、遺言書の作成、相続発生後の戸籍収集や相続登記まで対応できます。相続税の試算が必要な場合は、提携税理士と連携してお手伝いします。

まとめ|孫との養子縁組は「税金」と「家族の納得」をセットで考える

この記事のポイントをまとめます。

  • 孫養子は子と同じ第1順位の相続人になり、実子と同じ割合の相続分を持つ
  • 孫養子の相続税は2割加算されるが、基礎控除などが増え、家族全体では税額が下がる場合がある
  • 基礎控除で数えられる養子は、実子がいれば1人、いなければ2人まで
  • ほかの子どもの相続分が減るため、事前の説明と遺言書の作成が欠かせない
  • 縁組していない孫には、遺言書・生前贈与・生命保険で財産を残せる

孫との養子縁組は、相続税を抑えられる一方で、家族の取り分を大きく動かす手続きです。縁組をしてから「こんなはずではなかった」と気づいても、相続が始まってからでは調整が難しくなります。

司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、縁組前の取り分の試算から遺言書の作成、相続登記まで一貫してお手伝いしています。相続税の検討が必要な場合は提携税理士と連携します。孫との養子縁組を考え始めた段階で、まずは無料相談をご利用ください。

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著者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
司法書士法人やなぎ総合法務事務所運営の相続・家族信託相談所