連帯保証人や相続放棄について相談する男性

「連帯保証人」と「相続放棄」の関係は、2つのケースに分けて考える必要があります。亡くなった方が連帯保証人だった場合は、相続放棄で連帯保証債務から逃れられます。一方、相続人自身がもともと連帯保証人だった場合は、相続放棄をしても自分の連帯保証債務は消えません。

◆ この記事でわかること

  1. 「被相続人が連帯保証人」と「相続人自身が連帯保証人」で結論が正反対になる理由
  2. 連帯保証債務を引き継がずに済む方法(相続放棄・限定承認)とその期限
  3. 被相続人が連帯保証人だったかどうかを死後に調べる方法

※本記事は司法書士法人やなぎ総合法務事務所が監修しています。最終更新日:2026年7月

目次

連帯保証人と相続放棄には、なぜ2つのケースがあるのですか?

「誰が連帯保証人なのか」で状況が正反対になるからです。亡くなった方が連帯保証人だったのか、それとも相続する側が連帯保証人なのかで、相続放棄の効果がまったく変わります。

ここを混同すると、判断を誤ります。まず2つのケースを切り分けましょう。

ケースどういう状況か相続放棄で連帯保証債務は?
ケースA亡くなった方(被相続人)が、誰かの連帯保証人だった消える。放棄すれば引き継がない
ケースB相続する側(相続人)が、もともと連帯保証人だった消えない。放棄しても自分の債務は残る

ケースAの例。父が友人の事業融資の連帯保証人になっていて、父が亡くなった。この連帯保証人の立場は相続の対象になるため、放っておくと子が引き継ぎます。相続放棄をすれば引き継がずに済む、というわけです。

ケースBの例。父の借金の連帯保証人に、子である自分がなっていた。父が亡くなり相続放棄をしても、自分が署名した連帯保証契約は父の相続とは別物。だから自分の連帯保証債務は消えません。

【注意】

ケースBで相続放棄をしても、連帯保証人としての支払い義務は残ります。「放棄したのに請求が来た」という相談の多くが、このケースの取り違えです。自分が保証人になっていないか、契約書を先に確認してください。

被相続人が連帯保証人だった場合、相続放棄すれば借金から逃れられますか?(ケースA)

逃れられます。連帯保証人という立場(連帯保証債務)も相続財産に含まれるため、相続放棄をすれば引き継がずに済みます。

相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や保証債務などのマイナスの財産も引き継ぎます。連帯保証債務はこのマイナスの財産にあたります。

なぜ連帯保証債務まで相続されるのか

連帯保証人の地位は、原則として相続人へ承継されると考えられているためです(民法896条。相続人は被相続人の権利義務を承継する)。被相続人が生前に負っていた保証の責任が、そのまま相続人に移るわけです。

たとえ主債務者(お金を借りた本人)が返済を続けていても、油断はできません。将来その人が返せなくなれば、相続人が連帯保証人として一括請求を受ける立場に置かれます。

相続放棄すればどうなるか

相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかった扱いになります(民法939条)。プラスの財産を受け取れなくなる代わりに、連帯保証債務を含むすべてのマイナスの財産からも解放されます。

  • 預貯金・不動産などのプラスの財産 → 受け取れない
  • 借金・連帯保証債務などのマイナスの財産 → 引き継がない

プラスの財産が保証債務より明らかに少ないなら、相続放棄が選択肢になります。逆にプラスが多い場合は、次に説明する限定承認も検討の余地があるでしょう。

相続人自身が連帯保証人だった場合はどうなりますか?(ケースB)

相続放棄をしても、自分の連帯保証債務は消えません。その債務は相続で引き継いだものではなく、自分自身が保証契約で負った債務だからです。

よくあるのが、親が事業資金を借りる際に、子が連帯保証人としてサインしていたケース。親が亡くなって相続放棄をしても、子は連帯保証人として返済を求められます。

なぜ放棄では消えないのか

相続放棄で放棄できるのは、あくまで「被相続人から引き継ぐはずだった権利義務」です。自分が結んだ連帯保証契約は、被相続人の死とは無関係に有効なまま。放棄の対象に入りません。

むしろこのケースでは、二重に注意が必要です。親が主債務者だった場合、相続放棄をすると「主債務者としての地位」は引き継ぎませんが、「連帯保証人としての自分の立場」は残ります。結果として、放棄しても保証人として全額を請求される可能性があるのです。

ケースBで検討できる対処

連帯保証債務そのものを消すことはできませんが、負担を軽くする方法はあります。

  • 主債務者に他の相続人がいれば、その相続人へ返済を求められる場合がある(求償権)
  • 債務額が大きく返済が難しいなら、任意整理や個人再生など債務整理を検討する
  • 保証契約の内容(保証の範囲・時効の完成など)に争える点がないか、専門家に確認する

専門家としての見解・アドバイス

これまで相続のご相談を受けてきた経験から申し上げると、連帯保証人がからむ相談でいちばん多い誤解は「相続放棄さえすれば、すべての借金から解放される」という思い込みです。ケースBに当たる方が、放棄すれば安心だと考えて手続きを進め、後から保証債務の請求書が届いて青ざめる。この流れを何度も見てきました。
とくに注意が必要なのは、親子や夫婦のように近い関係で保証人になっている場合です。事業をしていた親の融資に、子が名前を貸していたことを本人が忘れている、あるいは把握していないことも少なくありません。相続の相談を受けた際は、まず「ご自身が保証人になっている契約はありませんか」と確認するところから始めています。
当事務所では、相続放棄の申述書類の作成、相続財産の調査、次順位の相続人への連絡までを司法書士が担当します。ケースBのように保証債務が残る場面では、債務整理に対応する提携先の専門家と連携してご案内しています。放棄で解決するのか、別の対処が必要なのか。手続きに入る前の見極めが何より大切です。

被相続人が連帯保証人だったかどうかは、どうやって調べればいいですか?

被相続人が連帯保証人だったかどうかの調べ方に悩み、顎に手を当てて考える男性

契約書・郵便物・信用情報機関への照会の3つで調べます。連帯保証債務は預金通帳のように残高で見えないため、意識して探す必要があります。

死後に見落とされやすいのが、この保証債務です。次の順で確認してください。

STEP 1自宅の書類・郵便物を確認する

金銭消費貸借契約書、保証契約書、金融機関からの通知、督促状などがないか探します。「保証」「連帯保証」と記された書面が手がかりになります。

STEP 2信用情報機関に照会する

被相続人の保証債務は、CIC・JICC・全国銀行協会(KSC)の3機関に照会すれば確認できる場合があります。相続人であることを示す戸籍などを添えて開示請求します。

STEP 3取引のあった金融機関に問い合わせる

通帳の引き落とし先や、取引の形跡がある金融機関に、保証契約の有無を確認します。

注意したいのは、個人間の連帯保証は信用情報機関に載らない点です。友人や知人の借金の保証人になっていた場合、契約書を見つけない限り把握が難しくなります。心当たりがあれば、生前の交友関係もたどってみてください。

【注意】

財産調査のために被相続人の預金を引き出したり、保証債務の一部を返済したりすると「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条)。調査中は財産に手をつけないでください。

連帯保証債務を引き継がない方法と期限を教えてください

相続放棄か限定承認を、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述します。この3ヶ月を過ぎると、保証債務を含めてすべて引き継ぐ「単純承認」となるのが原則です。

2つの方法の違いを整理しました。

比較の観点相続放棄限定承認
引き継ぐものプラスもマイナスも一切引き継がないプラスの財産の範囲でだけ引き継ぐ
向いている状況保証債務がプラスの財産を明らかに上回るプラスの財産のほうが多い、または残したい財産がある
申述する人相続人が1人でできる相続人全員で共同して行う
期限相続開始を知った日から3ヶ月以内相続開始を知った日から3ヶ月以内

相続放棄がシンプルで使いやすい方法です。ただし相続放棄をすると、借金だけでなくプラスの財産も手放すことになります。実家などを残したい事情があるなら、限定承認も選択肢に入れてください。

3ヶ月を過ぎてしまった場合

あきらめるのは早計です。連帯保証債務の存在を知らなかった相当の理由があれば、それを知った時点から3ヶ月と扱われ、放棄が認められる余地があります。

被相続人が連帯保証人だったことを死後しばらく経ってから知る、というのは珍しくありません。督促状が届いて初めて気づくケースもあります。ただし認められるかどうかはケースごとの判断になるため、督促に気づいた段階で早めに専門家へ相談されることをおすすめします。

ご相談事例

60代女性・父の死後8ヶ月で連帯保証債務の督促が届いたケース

【ご相談内容】

お父様が亡くなり、預貯金と自宅を相続。相続手続きも一段落した8ヶ月後、金融機関から約800万円の連帯保証債務の督促状が届きました。お父様が知人の事業融資の連帯保証人になっていたことを、ご家族の誰も知らなかったそうです。「もう3ヶ月をとうに過ぎているが、何とかならないか」とご相談にお越しになりました。

【対応結果】

保証契約書や督促状の到達経緯を精査し、連帯保証債務の存在を知る機会がなかった事情を裏づける資料を整理。督促状の到達日を熟慮期間の起算点とする上申書を添えて、相続放棄の申述書類を作成しました。すでに相続した預貯金の扱いなど個別の論点も整理したうえで、相談から約1ヶ月で家庭裁判所へ申述。受理通知が届いたのは、その後さらに1ヶ月ほど経ってからでした。

連帯保証人として支払いを求められたら、どう対応すればいいですか?

すぐに全額を支払わず、まず請求内容の確認と時効の可能性をチェックしてください。連帯保証には主債務者に先に請求するよう主張できる権利がなく、いきなり全額を求められるためです。

連帯保証と普通の保証の違い

連帯保証人は、普通の保証人が持つ2つの権利を持ちません。ここが「連帯」の重い部分です。

  • 催告の抗弁権(先に主債務者へ請求してと言える権利)がない
  • 検索の抗弁権(主債務者に財産があるから先にそちらへと言える権利)がない

つまり債権者は、主債務者を飛ばして連帯保証人へ直接、全額を請求できます。「まず本人に言ってください」が通用しないのが連帯保証です。

請求を受けたときの確認事項

  • 請求書の金額・契約日・主債務者を、手元の契約書と照らし合わせる
  • 最後の返済や請求から一定期間が過ぎていれば、消滅時効を主張できる場合がある
  • 支払いや「分割にしてほしい」といった申し出は、時効の更新にあたり不利になることがあるため慎重に

時効の期間は契約時期などで変わります。安易に一部を支払う前に、専門家へ相談したほうが安全です。

相続放棄の手続きにかかる費用はいくらですか?

自分で手続きする場合は数千円、専門家に依頼した場合の目安は3万〜7万円です。連帯保証債務の調査から任せる場合は、その分の費用が加わります。

内訳を整理しました。

費用項目金額の目安
収入印紙800円(相続人1人あたり)
連絡用の郵便切手数百円〜1,000円程度
戸籍謄本など1通450円、除籍・改製原戸籍は1通750円
被相続人の住民票除票1通300円程度
専門家報酬の目安3万〜7万円程度

相続放棄そのものの実費は、数千円で収まります。専門家に依頼する費用が加わっても、後から保証債務を全額背負うリスクと比べれば、判断材料を整えておく意味は大きいといえるでしょう。

なお、連帯保証債務が本当にあるのか、放棄すべきかどうかの見極めが難しい場合は、財産調査からサポートを受けられます。手続きの入口で方向性を誤らないことが、いちばんの節約になります。

連帯保証人と相続放棄に関するよくある質問

Q1. 連帯保証人は相続放棄できますか?

「誰が連帯保証人か」で変わります。亡くなった方が連帯保証人だった場合は、相続放棄でその債務を引き継がずに済みます。一方、相続する側がもともと連帯保証人だった場合は、相続放棄をしても自分の連帯保証債務は消えません。

Q2. 親の借金の連帯保証人になっています。相続放棄すれば返済しなくてよいですか?

相続放棄をしても、連帯保証人としての返済義務は残ります。自分が結んだ保証契約は、親の相続とは別の債務だからです。放棄では解決しないため、返済が難しい場合は債務整理などの検討が必要になります。

Q3. 被相続人が連帯保証人だったと後から知りました。今から相続放棄できますか?

連帯保証債務の存在を知らなかった相当の理由があれば、知った時点から3ヶ月以内に申述して認められる余地があります。督促状で初めて気づくケースは珍しくありません。気づいた段階で早めに専門家へ相談してください。

Q4. 連帯保証債務があるかどうか分からず、放棄すべきか迷っています。

判断がつかない場合は、限定承認や熟慮期間の伸長も選択肢になります。財産調査で保証債務の有無を確認したうえで判断するのが安全です。3ヶ月の期限があるため、早めに調査を始めてください。

Q5. 相続放棄をすると、他の相続人に連帯保証債務が移りますか?

移る可能性があります。被相続人が連帯保証人だった場合、放棄した人の分の債務は、次順位の相続人へと引き継がれていきます。放棄する際は、次に相続人になる方への連絡を忘れないようにしてください。

Q6. 連帯保証人として一括請求されました。分割にしてもらえますか?

債権者と交渉できる場合もありますが、支払いや分割の申し出が時効を更新して不利になることがあります。安易に応じる前に、請求内容と時効の可能性を専門家に確認することをおすすめします。

Q7. 相続放棄の手続きは司法書士に頼めますか?

司法書士が申述書類の作成をお引き受けできます。連帯保証債務の有無を調べる財産調査、戸籍の収集、家庭裁判所への提出書類の作成まで対応可能です。保証債務が残るケースでは、債務整理の専門家と連携してご案内します。

まとめ|「誰が連帯保証人か」で結論が変わる

この記事のポイントをまとめます。

  • 亡くなった方が連帯保証人だった場合(ケースA)は、相続放棄で連帯保証債務から解放される
  • 相続する側がもともと連帯保証人だった場合(ケースB)は、相続放棄をしても自分の債務は消えない
  • 連帯保証債務を引き継がない方法は相続放棄と限定承認。期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内
  • 保証債務は通帳に残高で見えない。契約書・郵便物・信用情報機関で意識して調べる
  • 連帯保証人には催告・検索の抗弁権がなく、いきなり全額請求される。請求を受けたら時効の確認を

連帯保証がからむ相続は、最初の切り分けを誤ると取り返しがつきません。「放棄すれば大丈夫」と決めつける前に、自分がどちらのケースなのかを確かめることが出発点です。

やなぎ総合法務事務所では、相続財産・保証債務の調査、相続放棄の申述書類の作成、次順位の相続人への連絡までを一貫してサポートしています。放棄で解決しないケースでは、債務整理の専門家と連携してご案内します。ご相談は無料です。督促状が届いた段階、判断に迷った段階で、期限内にお早めにご相談ください。

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著者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
司法書士法人やなぎ総合法務事務所運営の相続・家族信託相談所