書類と電卓を前に、2人の男性が資料を見ながら相談・説明を行う様子

兄弟で遺産を分ける手続きは、正しくは「遺産分割」といい、親が亡くなり子である兄弟姉妹が相続する場合、子どうしの相続分は人数で均等が原則です(民法900条)。分け方は相続人全員の話し合いで自由に決められますが、不動産が絡むと揉めやすいため注意が必要です。

◆ この記事でわかること

  1. 「財産分与」と「遺産分割」の違いと、兄弟で分けるときの法定相続分
  2. 遺産分割の進め方5ステップと、不動産を兄弟で分ける4つの方法
  3. 兄弟間でトラブルになりやすいケースと予防策(遺言書・生前対策)

※本記事は司法書士法人やなぎ総合法務事務所が監修しています。最終更新日:2026年6月

目次

相続の「財産分与」とは?兄弟で遺産を分けることですか?

親の遺産を兄弟で分ける手続きは、法律上は「財産分与」ではなく「遺産分割」といいます。財産分与は、本来は離婚のときに夫婦の財産を分ける制度を指す言葉です。日常会話では混同されがちですが、相続の場面で使う正しい用語は遺産分割です。

両者の違いを整理すると次のとおりです。

用語使う場面内容
遺産分割相続亡くなった方の財産を相続人全員で分ける手続き
財産分与離婚夫婦が築いた財産を離婚時に分ける制度(民法768条)

なお、親から相続した遺産は夫婦の協力と無関係に得た「特有財産」のため、離婚時の財産分与の対象には原則なりません。本記事では、検索される方が知りたい「兄弟での遺産の分け方=遺産分割」を中心に解説します。

兄弟で相続するときの法定相続分はどれくらいですか?

子どうし(兄弟姉妹間)で親の遺産を相続する場合、法定相続分は人数で均等に分けるのが原則です(民法900条)。長男だから多い、嫁いだ娘だから少ない、といった法律上の差はありません。

代表的な組み合わせごとの相続分は次のとおりです。

相続人の組み合わせ法定相続分
子2人のみ(親が死亡)子1人あたり1/2
子3人のみ子1人あたり1/3
配偶者と子2人配偶者1/2・子1人あたり1/4
配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹配偶者3/4・兄弟姉妹1/4を人数で均等
兄弟姉妹のみ(独身の兄弟が死亡)兄弟姉妹の人数で均等

「兄弟の相続」には2つのケースがある

ひと口に兄弟の相続といっても、①親が亡くなり子ども(兄弟姉妹)どうしで分けるケースと、②独身の兄弟姉妹が亡くなり、残った兄弟姉妹が相続人になるケースの2つがあります。①は子としての相続、②は兄弟姉妹としての相続で、相続分も必要書類も異なります。②では亡くなった方の出生からの戸籍に加えて両親の戸籍もすべて集める必要があり、手続きの負担が大きくなりがちです。

ただし、法定相続分はあくまで「話し合いがまとまらないときの基準」です。相続人全員が合意すれば、長男が実家を相続し次男が預金を多めに受け取るなど、自由な割合で分けられます。

計算例|遺産4,800万円を兄弟3人で分ける場合

親が亡くなり、遺産4,800万円(実家2,400万円+預金2,400万円)を子3人で相続するとします。法定相続分どおりなら1人あたり1,600万円です。話し合いの結果、「長男が実家2,400万円を取得し、預金は次男・三男が1,200万円ずつ。差額は長男が各400万円の代償金を支払う」といった調整も可能です。基準を知ったうえで、家族の事情に合わせて柔軟に決めるのが遺産分割の実務です。

兄弟で遺産を分ける手続きはどう進めますか?

一方が書類にペンで記入し、もう一方が該当箇所を指し示しながら手続きを進める様子

兄弟での遺産分割は、相続人と財産の調査から遺産分割協議書の作成まで、5つのステップで進めます。

STEP 1相続人を確定する

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を集め、相続人全員を確定します。前婚の子や認知した子がいないかもここで確認します。

STEP 2相続財産を調査する

預貯金・不動産・株式・借金まで財産の一覧(財産目録)を作ります。名寄帳や残高証明書の取得が有効です。

STEP 3遺産分割協議を行う

相続人全員で誰が何を受け取るかを話し合います。1人でも欠けた協議は無効です。

STEP 4遺産分割協議書を作成する

合意内容を書面にし、相続人全員が実印を押して印鑑証明書を添付します。

STEP 5名義変更・解約手続きを行う

不動産は相続登記(2024年4月から義務化・3年以内)、預貯金は解約・払い戻しを行います。

遺言書がある場合は、原則として遺言の内容が優先されるため、協議の前にまず遺言書の有無を確認してください。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することになります。

遺産分割協議書と名義変更で必要になる主な書類

兄弟での相続手続きでそろえる代表的な書類は次のとおりです。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  • 亡くなった方の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本・印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(全員の実印を押印)
  • 不動産の固定資産評価証明書・登記事項証明書
  • 預貯金の残高証明書(相続発生日時点)

戸籍は本籍地を移すたびに分かれているため、取り寄せ先が3〜5ヶ所になることも珍しくありません。2024年3月からは最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できる広域交付制度も始まっており、負担は以前より軽くなっています。ただし、請求できる人や取得できる証明書には制限があり、戸籍の附票など対象外の書類もあるため、事前確認が必要です。

不動産は兄弟でどうやって分ければよいですか?

実家などの不動産を兄弟で分ける方法は、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つです。現金と違って物理的に分けられないため、兄弟相続で最も揉めやすいのが不動産です。

4つの方法の特徴を比較しました。

方法内容向いているケース
現物分割実家は長男、預金は次男、と財産ごとに分ける財産の種類が複数あり価値のバランスが取れる場合
代償分割1人が不動産を取得し、他の兄弟に代償金を支払う実家に住み続けたい相続人がいる場合
換価分割不動産を売却し、代金を分ける誰も住む予定がなく公平に分けたい場合
共有分割兄弟の共有名義にする原則おすすめしない(将来の紛争のもと)

【注意】

共有分割は一見公平ですが、売却や賃貸に共有者全員の同意が必要になり、次の相続で共有者がさらに増えて収拾がつかなくなる例が後を絶ちません。やむを得ない事情がない限り避けるのが無難です。

兄弟の相続でトラブルになりやすいのはどんなケースですか?

兄弟間のトラブルで目立つのは、不動産の分け方・生前贈与の不公平感・介護の負担差の3つです。司法統計でも、遺産分割事件の多くは遺産5,000万円以下の「ごく普通の家庭」で起きています。

  • 実家しか財産がなく、誰が取得するかで対立する
  • 特定の兄弟だけが生前贈与(特別受益)を受けていて、不公平だと他の兄弟が主張する
  • 親と同居して介護してきた兄弟が、貢献分(寄与分)の上乗せを求める
  • 親の通帳を管理していた兄弟が、財産の内容を開示しない
  • 疎遠・音信不通の兄弟がいて、協議自体が進められない

トラブルを放置すると、預金の払い戻しや不動産の売却ができないまま固定資産税や管理負担だけが続きます。遺産分割に法律上の期限はありませんが、2023年4月の民法改正により、相続開始から10年を過ぎると原則として特別受益や寄与分の主張ができなくなりました。先送りのデメリットは年々大きくなっています。

生前贈与の持ち戻し(特別受益)や寄与分は、法律上の評価が難しく、感情的な対立に発展しやすい論点です。当事者だけの話し合いで行き詰まる前に、第三者である専門家を入れることが解決の近道になります。

専門家としての見解・アドバイス

【ご相談内容】

これまで兄弟間の遺産分割のご相談を数えきれないほどお受けしてきましたが、現場で感じるのは「仲の良い兄弟ほど油断しやすい」ということです。気心が知れているからと口約束で進めた結果、後から配偶者の意見が入って話が覆る、というのが典型的な揉めるパターンです。協議内容は短くても書面に残すことが肝心です。
また、親の通帳を管理していた兄弟への「使い込み疑惑」は、実際には記録を整理すれば誤解だったという例も少なくありません。当事務所では、財産調査で取引履歴を客観的に整理し、感情論を事実ベースの話し合いに戻すお手伝いをしています。提携弁護士・税理士とも連携し、争いになる前の予防を最優先にしています。

兄弟間の相続トラブルを防ぐにはどうすればよいですか?

最も効果的な予防策は、親が元気なうちに遺言書を作成しておくことです。遺言書があれば原則として遺産分割協議が不要になり、兄弟が話し合いで対立する場面そのものを減らせます。

  • 公正証書遺言を作成する……公証人が関与するため無効になりにくく、紛失・偽造の心配もありません(費用目安:公証人手数料 3万〜10万円程度)
  • 生前に家族で話し合う……実家を誰が継ぐか、介護の分担などを共有しておくと、相続後の不満が出にくくなります
  • 財産目録を作っておく……財産の全体像が見えるだけで「隠しているのでは」という疑心暗鬼を防げます
  • 生命保険を活用する……代償分割の資金を死亡保険金で準備しておくと、実家を継ぐ兄弟が代償金を払いやすくなります

すでに相続が始まっている場合でも、早い段階で司法書士などの専門家が財産調査や協議書作成をサポートすることで、感情的な対立を避けられる例は数多くあります。

遺言書には公正証書遺言がおすすめ

遺言書には主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は手軽ですが、形式の不備で無効になったり、発見した家族による家庭裁判所での検認(開封・確認の手続き)が必要だったりと、落とし穴が少なくありません。2020年から始まった法務局の自筆証書遺言保管制度を使えば検認は不要になりますが、内容のチェックまではしてもらえません。兄弟間の争いを防ぐ目的なら、公証人が内容に関与し原本が公証役場に保管される公正証書遺言が確実です。遺留分(子などに保障された最低限の取り分)に配慮した内容にしておくと、さらに紛争リスクを下げられます。

ご相談事例

実家の分け方で対立しかけた兄弟3人のご相談

【ご相談内容】

大阪市在住の50代男性。お父様が亡くなり、相続人は兄弟3人。遺産は実家(評価額約2,000万円)と預金約1,200万円でした。実家に住み続けたい長男と、均等な分割を求める弟2人で話し合いが平行線になり、当事務所の無料相談へお越しになりました。

【対応結果】

財産調査で全体像を整理したうえで、長男が実家を取得し、弟2人へ代償金各400万円と預金を組み合わせる代償分割案をご提案。遺産分割協議書の作成から相続登記、預金の解約手続きまで一括で対応し、ご相談から約2ヶ月半で全手続きが完了しました。「第三者が数字で整理してくれたことで冷静に話せた」とのお声をいただいています。

兄弟姉妹が相続人になる場合の注意点はありますか?

独身の兄弟姉妹が亡くなって相続人になる場合、遺留分がない・相続税が2割加算される・戸籍収集の負担が大きいという3つの特徴があります。

  • 兄弟姉妹に遺留分はありません。遺言で全財産を他の人に渡すと書かれていれば、それに従うことになります
  • 兄弟姉妹が相続する場合、相続税は通常の2割増しで計算されます(相続税の2割加算)。兄弟姉妹や甥姪が相続する場合、その人の相続税額に2割加算がされます。子として親を相続する場合には、2割加算はありません
  • 兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子(甥・姪)が代襲相続しますが、一代限りで甥姪の子には引き継がれません

また、相続人を確定するために亡くなった方と両親それぞれの戸籍をすべて集める必要があり、書類収集だけで1〜2ヶ月かかることもあります。負担が大きい場合は、戸籍収集から司法書士に任せることも検討してください。

兄弟で相続したときの相続税はどうなりますか?

相続税がかかるのは、遺産が基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合だけです。たとえば子3人が相続人なら基礎控除は4,800万円で、遺産がこれ以下なら相続税はかからず、申告も原則不要です。

基礎控除を超える場合は、相続を知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署へ申告・納税が必要です。申告期限に遅れると延滞税や加算税がかかるうえ、小規模宅地等の特例(自宅の土地の評価額を最大80%減らせる制度)などが使えなくなる恐れもあります。

注意したいのは、兄弟姉妹として相続する場合(独身の兄弟の遺産を相続するケースなど)は、相続税が2割加算される点です。兄弟姉妹や甥姪が相続する場合、その人の相続税額に2割加算がされます。子として親の遺産を相続する場合には加算はありません。遺産に不動産が含まれると評価額の計算も複雑になるため、基礎控除を超えそうな場合は早めに税理士へ相談しましょう。当事務所でも提携税理士と連携し、登記と申告をまとめて進められる体制を整えています。

兄弟の相続に関するよくある質問

Q1. 兄弟で遺産を均等に分けないといけませんか?

均等でなくても問題ありません。法定相続分は話し合いがまとまらないときの基準で、相続人全員が合意すれば自由な割合で分けられます。実家を継ぐ兄弟が多めに受け取る、介護をした姉が上乗せを受けるといった分け方も有効です。

Q2. 長男だから遺産を多くもらえるという決まりはありますか?

ありません。現在の民法では子どうしの相続分は均等です。「長男がすべて継ぐ」という旧民法時代の家督相続は1947年に廃止されており、法律上の根拠はありません。

Q3. 疎遠な兄弟が遺産分割協議に応じてくれないときは?

家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なため、1人でも応じないと成立しません。調停では調停委員が間に入り、合意を目指して話し合いを進めます。

Q4. 兄弟の1人が勝手に預金を引き出していたらどうなりますか?

不当利得の返還や損害賠償を請求できる場合があります。まずは金融機関で取引履歴を取得し、使い道を確認することが第一歩です。感情的に対立する前に、専門家へ相談して事実関係を整理することをおすすめします。

Q5. 兄弟の1人が相続放棄したら相続分はどうなりますか?

放棄した人は最初から相続人でなかったことになり、残りの兄弟で分けます。たとえば3人兄弟で1人が放棄すると、残る2人が1/2ずつ相続します。放棄には相続を知った日から3ヶ月以内という期限があります(民法915条)。

Q6. 親の介護をしてきた分、遺産を多くもらえますか?

寄与分として上乗せが認められる場合があります。ただし「通常の親孝行の範囲」では認められにくく、無償で長期間介護した、事業を手伝って財産の維持に貢献したなどの事情と証拠が必要です。協議で合意できれば、寄与分の主張によらず自由に上乗せできます。

Q7. 相続した遺産は自分の離婚時の財産分与の対象になりますか?

原則なりません。相続で得た財産は夫婦の協力と無関係な「特有財産」だからです(民法762条)。ただし、相続した不動産を夫婦で維持・管理してきたなどの事情があると、例外的に一部が考慮されることがあります。

まとめ|兄弟の遺産分割は「全員の合意」と「書面化」がすべて

この記事のポイントをまとめます。

  • 兄弟で遺産を分ける手続きは「財産分与」ではなく「遺産分割」。子どうしの相続分は均等が原則
  • 分け方は相続人全員の合意があれば自由。協議書への書面化と実印・印鑑証明が不可欠
  • 不動産は現物・代償・換価の3方式から選ぶ。共有分割は将来の紛争リスクが高い
  • 特別受益・寄与分・財産の不開示が三大トラブル要因。早期の専門家関与が予防になる
  • 兄弟姉妹が相続人になる場合は、遺留分なし・相続税2割加算・戸籍収集の負担に注意

兄弟間の相続は、お金の問題である以上に感情の問題です。法定相続分や手続きの正しい知識を共有するだけで、不要な対立の多くは避けられます。やなぎ総合法務事務所では、財産調査・遺産分割協議書の作成・相続登記までを一括でサポートし、大阪(天王寺・あべの)と東京(恵比寿・広尾)の2拠点で無料相談を受け付けています。司法書士のほか提携の弁護士・税理士とも連携していますので、兄弟での相続にお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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著者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
司法書士法人やなぎ総合法務事務所運営の相続・家族信託相談所